3Dプリンタで量産ニーズに応えるスワニー、実現のカギは生産技術との融合日本ものづくりワールド 2022

スワニーは「日本ものづくりワールド 2022」(リアル展、東京ビッグサイト、2022年6月22〜24日)内の「第5回 次世代3Dプリンタ展」に出展したCarbon(JSR)のブース内にて、同年6月22日に発表した「製造業向け金型レス部品量産サービス」に関する展示を行っていた。

» 2022年06月24日 07時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 スワニーは「日本ものづくりワールド 2022」(リアル展、東京ビッグサイト、2022年6月22〜24日)内の「第5回 次世代3Dプリンタ展」に出展したCarbon(JSR)のブース内にて、同年6月22日に発表した製造業向け金型レス部品量産サービスに関する展示を行っていた。

 製造業向け金型レス部品量産サービスでは、Carbonの3Dプリンティングシステム「M2」1台と、スワニーの本社工場内に新設したクリーンルームからなる「Hybrid Factory」で、3Dプリンタを活用した金型レスでの部品量産を行う。

「Hybrid Factory」として新設したクリーンルームにはCarbonの3Dプリンタ「M2」が設置されている 「Hybrid Factory」として新設したクリーンルームにはCarbonの3Dプリンタ「M2」が設置されている[クリックで拡大] 出所:スワニー

 スワニーが長年培ってきた3D部品設計、試作、量産技術のノウハウや生産技術といった人手による“匠の技”と、クリーンルーム環境および3Dプリンティング技術を融合させることで、従来のアプローチでは物理的な制約やコスト、性能、品質面で難しいとされてきた3Dプリンタによる部品の量産を実現する。なお、現時点ではM2を1台設置している状況だが、「M3」の追加導入の準備も進めているところだという。

 「われわれが目指しているのは、1000〜5000個の量産だ。通常、5000個を超えてくるようなケースであれば量産型を作って対応できる。また、1000個程度であればアルミ型で対応することも可能だ。だが、その間に位置する1000〜5000個の量産ニーズ、あるいは5000個打った後にもう1ロットほしいといった中で金型がもたないといった状況に対しての選択肢がなかった。また、開発サイクルが短くなる中、途中で部品形状を変えたいといったニーズに対しては3Dプリンタという選択肢があるが、従来のやり方では材料費も高く、物性も足りないなどの課題が残る。これらの課題を、ある種アナログ的ともいえる人手による生産技術と、クリーンルーム、そしてCarbonの3Dプリンティング技術による“ハイブリッド”なモノづくりによって解消し、金型レスの部品量産サービスを実現する」(スワニー 代表取締役社長の橋爪良博氏)

スワニー 代表取締役社長の橋爪良博氏(写真左)と、スワニー 3Dプリンタ担当の上島文孝氏(写真右) スワニー 代表取締役社長の橋爪良博氏(写真左)と、スワニー 3Dプリンタ担当の上島文孝氏(写真右)[クリックで拡大]

 クリーンルームに関しては、メーカーから依頼を受け、実際に部品の量産を行っていくためには「3Dプリンタによる製造だろうと、量産である以上、必ず湿度や温度などの変化点の管理ができていることが求められる」(橋爪氏)という。そこで、スワニーの本社工場の一部を改装し、明るく開放感のあるクリーンルームを新設した。

 展示ブースでは、Hybrid Factoryでの金型レス部品量産の適用事例として、ドローンショーが開発するドローンショー向けドローン「unica」の筐体を展示していた。ドローンショーが設計したunicaの機体に対して、スワニーがDfAM(Design for Additive Manufacturing:付加製造を前提とした設計)のアプローチで再設計を施すことで、強度を担保しながらも、従来比約30%の軽量化と風力抵抗の軽減を実現した筐体を実現したという。

ドローンショーが開発するドローン「unica」。写真上の白い筐体は従来機で、下の黒い筐体(一部)がDfAMを適用してHybrid Factoryで製造された新機体 ドローンショーが開発するドローン「unica」。写真上の白い筐体は従来機で、下の黒い筐体(一部)がDfAMを適用してHybrid Factoryで製造された新機体[クリックで拡大]

 「金型工法を前提に設計したパーツをそのまま3Dプリンタで造形し、『強度が足りない!』と評価する方もいるが、それは意味がない。そうではなく、積層造形(3Dプリンタ)を使うのであれば、それに適した設計をすべきだ。積層造形での生産を前提にし、サポート形状までデザインしつつ、強度を担保しながら設計を最適化していく。こうした生産技術は工夫やカイゼンといった日本人が得意とする部分だ。われわれが培ってきた生産技術の力が融合したハイブリッドな環境を、Hybrid Factoryに実装することで、1000〜5000個の量産ニーズにしっかりと応えていきたい」(橋爪氏)

 なお、スワニーといえば、StratasysのPolyJet方式3Dプリンタによる樹脂製の型を用いた工法「デジタルモールド」で有名だが、今回のHybrid Factoryの実現においては、「顧客視点に立ち、さまざまな観点から検証を行った結果、最終的にCarbonの3Dプリンタを導入することに決めた」(橋爪氏)のだという。

 展示ブースでは、Hybrid Factoryで用いる検証済みの材料として、「EPU40」(TPU ショアA相当)、「SIL30」(シリコーンウレタン)、「EPX82」(PBT-GF 20%相当)の3種類を用いた部品サンプルを展示していた。

「EPU40」「SIL30」「EPX82」 Hybrid Factoryで用いる検証済みの材料による部品サンプル[クリックで拡大]

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