世界最大規模の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ) 2022」が、5月30日(現地時間)にドイツのハノーバー国際見本市会場で開幕しました。現地参加した筆者が前後編で会場レポートをお届けします。
「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ) 2022」が2022年6月2日、閉会しました。主催者側の発表によると、来場者は約7万5000人、オンライン参加者は約2万4000人、出展企業は約2500社で、製品・ソリューションは8000点超展示されたそうです。スタートアップも150社超出展し、会場で登壇した講演者は600人以上に上りました。
今回で75周年を迎えた同メッセですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大やウクライナ情勢に伴って開催が5月に変更されたこと、会期も従来と比べて1日短縮されたこと、またデジタル版も並立するハイブリッド展示会として開催したことなど、さまざまな初挑戦がありました。そのような中、主催のドイツメッセ、ドイツメッセ日本代表部、出展企業各社のイベントへの思い入れや尽力のかいあって開催までこぎ着けることができたのだと、4日間のイベントを通じて実感しました。
さて、すでに個別の展示内容を伝えるニュースは各媒体や出展企業から出されていますし、そもそもデジタル展示会もオンデマンド配信されています。展示の個別内容を詳細にお伝えする必要はないでしょう。そこで、本稿では筆者がハノーバーメッセ2022を現地で巡って体験したこと、感じたことを中心にレポートしていきます。
2022年のハノーバーメッセのオープニングセレモニーでは、ドイツのシュルツ首相がエネルギー分野への投資を加速すると明言しました。行政の計画や承認に必要な期間を半分程度に短縮し、2030年までに消費電力の約80%を再生可能エネルギーでまかなうという計画です。また同メッセ内で開催された日独経済フォーラムでは、ドイツ企業が調達品の製造工程における人権や環境について、自社製品と同等の扱いとすることを義務化する「サプライチェーン・デューデリジェンス法」や、自動車業界全体でデータ交換標準を規定する「Catena-X(カテナ-X)」を製造業全体へ広げる構想が披露されました。
欧州企業の出展に目を向けると、シーメンスや産業機器大手ボッシュの子会社であるボッシュ・レックスロスは、仮想空間に製造現場を再現するデジタルツインを活用して、発電所の設計から運用まで最適な効率性を実現するソリューションを前面に押し出す展示をしました。サプライヤーとメーカー、複数ITベンダー間での、エネルギー消費に関するデータ交換を前提としたソリューション群です。
エネルギー消費をバリューチェーン全体で最適化し、エネルギー消費を抑制する。そのために企業間データ交換を推進する。必要な規制は政府が策定し、その実行スケジュールをできる限り縮めていく。こうした取り組みを推進するというメッセージが、オープニングセレモニーから企業ブースの出展内容まで一貫して表れていたことが印象的でした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.