今週公開した記事についても少し紹介させてください。「日産がLiDAR採用の運転支援技術、2段階の衝突回避で複雑な場面に対応」という記事のことです。
記事の中でも触れていますが、この発表で興味深かったのは、日産自動車がLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を使い始めた、というところです。日産自動車は、2019年に運転支援システム「プロパイロット2.0」を発表した時点では「LiDARの検知性能は、ミリ波レーダーとカメラの統合処理で得られる情報を超えられていない」と評価していました。
自動車メーカーが何か新しい部品を使わない理由を説明するとき、個人的な体感では「コストが高い」とか「車載用としての信頼性や安全性に課題がある」という回答が多いです(自動運転用コンピュータについては消費電力が高すぎるという理由も出てきますね)。あとどれだけコストが下がればいいか、どうすれば信頼性や安全性が満たせるのか、明確な回答が得られないことも少なくないように感じています。
そのため、2019年に日産自動車が回答したように「どんな性能が不足しているか」という点に言及するのは珍しいと感じて、よく覚えていました。その日産自動車が“使える”と判断したLiDARが出てきたのだな、という意味でも興味深い発表でした。また、求める性能に届いているのがルミナー製のLiDARだったと明言したのも印象的でした。
同じように印象に残っているのは、「全固体電池は寿命が短い」とトヨタ自動車が説明した件です。全固体電池に期待を寄せていたのでこの説明にガッカリした、という声をよく見掛けました。
しかし、現時点での欠点に言及したからと言って、採用するつもりがないというわけではありません。トヨタ自動車は全固体電池の低寿命について、「全固体電池を長く使う中で固体電解質と負極活物質の間に隙間が生じてしまうことが要因だ。そうした現象を抑制する材料の開発に取り組む」と説明しています。そういったテーマで材料開発に取り組んでいるのはトヨタ自動車ばかりでなく、解決に向けて着実に進んでいくことでしょう。
今回、日産自動車はLiDARのソリッドステート化についても性能の課題に言及しました。現状では感度が不足しており、検知距離の長さなど必要な性能が出せないというのです。LiDARには、対象範囲をスキャンするために回転部品を用いるものと、回転部品をなくしたソリッドステート型があります。回転部品は信頼性に懸念がある、ということからサプライヤー各社でソリッドステート型のLiDARの開発が進められています。
日産自動車ほどの大手自動車メーカーであれば、世界中のサプライヤーや研究機関からソリッドステート型のLiDARについて情報を得た上で、「まだ性能が足りない」と判断していることでしょう。そのオーダーに応えられるのがどこのサプライヤーなのか、そして、日産自動車がソリッドステート型のLiDARを採用する日がいつ来るのか、楽しみですね。
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