大排気量の新開発ディーゼルエンジンで、マツダは「電動化の移行期」に打って出る電動化(2/3 ページ)

» 2022年04月08日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

大排気量直6ディーゼル×マイルドハイブリッド=高効率

 使用エネルギー節約のロードマップは、「理想の燃焼にいかに近づけられるか」がテーマとなる。既存のガソリンエンジン「SKYACTIV-G」やディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」もそのロードマップに沿ったものだ。SKYACTIV-Gを理想の燃焼に向けて1段階進めたのが「SKYACTIV-X」だ。CX-60に搭載する新型ディーゼルエンジンも同様にして従来のSKYACTIV-Dから理想の燃焼に近づけた。

 その直列6気筒ディーゼルエンジンと、48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「e-SKYACTIV D」がCX-60に搭載されるが、これはマツダにとって使用エネルギー節約の現実的な理想形である。エンジンは大排気量ほど高効率な領域が広がり、気筒数が多いほど回転数の低い領域を使うことができ、NOxも低減できる。そこにエンジンが苦手とする低負荷の領域を補う小さなモーターを組み合わせることができれば、全体としては高効率なシステムになる……というのが、マツダの考え方だ。

理想の燃焼に近づけたエンジンと、最適なモーターの組み合わせによって高効率なシステムを実現する[クリックで拡大] 出所:マツダ

 e-SKYACTIV Dは、他社のプレミアムブランドが展開するディーゼルエンジンのSUVに匹敵する走りと、B/Cセグメント並みのCO2排出量を両立することを目指す。

 廣瀬氏は「使用エネルギーの節減に向けて内燃機関の効率を高め続けるのがマツダの使命の1つだ。バイオ燃料など新たな燃料が普及するときに、大きなオポチュニティーにもなるだろう。ディーゼルゲート事件もあったが、ディーゼルエンジン復権の日は必ず来る。その信念で今後も開発を続けていく」と述べる。

燃料混合気を分割配置する「2段エッグ燃焼室」

 新開発の直列6気筒ディーゼルエンジンは、空間制御予混合燃焼により、綿密で高速な燃料調量制御をさらに高圧化した。「2段エッグ燃焼室」の採用により、ピストン燃焼室内で燃料混合気を分割配置し、低速から高速までクリーンな燃焼を実現する。実用運転域の幅広い範囲で熱効率40%以上を達成するという。

 「(大排気量化で)たくさんの空気があるほど高効率なリーンバーンができ、均質な混合気を燃やして必要な時には大きな力を取り出せる。(排気量2.2lの既存のディーゼルエンジンと比較して)大排気量化により全域で燃費向上とNOx低減を達成し、トルク向上により走りの良さも高めている」(マツダ 執行役員の中井英二氏)

 新開発の直列6気筒ディーゼルエンジンではバイオ燃料を使用しても軽油と同等の出力や効率を維持し、燃焼騒音なども悪化しないことを確認している。

新開発のディーゼルエンジンで進化させた燃焼(左)。大排気量化と燃焼改善の効果(右)[クリックで拡大] 出所:マツダ

マイルドハイブリッドとプラグインハイブリッドに対応する8速AT

 CX-60には、新開発の直列6気筒ディーゼルエンジンのマイルドハイブリッドシステムの他、マツダ初となるプラグインハイブリッドシステムも設定される。どちらにも共通して搭載されるのが、トルクコンバーターレスの8速ATだ。マイルドハイブリッドシステムは小さなモーターで低負荷領域をカバーし、プラグインハイブリッドシステムではより大きなモーターが中負荷領域までカバーする。

 発進機構やオイルポンプなどによるエネルギーロスを従来のマツダの6速ATと比べてWLTCモードで22%改善した。また、モーターアシストと組み合わせることで、燃費のよい領域で運転できるようにする。また、一般的なトルクコンバーターATと比べてアクセル開度に対する発進の応答が良好になる。“リズムのよい変速間隔”や、“キレのある変速”により、軽快な走りも実現したという。

 さらに、トランスミッションの配置によってドライバーが体のねじれた姿勢にならないよう、快適なドライビングポジションをとれるパッケージングとした。

自然なドライビングポジションをとれるパッケージング(左)。マイルドハイブリッドとプラグインハイブリッドのシステム構成の違い(右)[クリックで拡大] 出所:マツダ
新開発の8速ATの環境への貢献(左)。発進や変速への応答性(右)[クリックで拡大] 出所:マツダ

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