大阪大学は、薬剤耐性能を獲得した細菌が、自身の形態を変化させていることを見出した。また、深層学習を用いて、薬剤耐性菌の電子顕微鏡画像を高精度で判別することに成功した。
大阪大学は2022年3月16日、薬剤耐性能を獲得した細菌が自身の形態を変化させていることを見出し、深層学習を用いて、薬剤耐性菌の電子顕微鏡画像を高精度で判別することに成功したと発表した。
研究グループは、細菌の多剤耐性に関する研究過程において、薬剤耐性菌が遺伝子だけでなく形も変化させていることに着目。そこで、細菌の良好な内部構造を観察するため、急速凍結固定法で瞬時に凍結した細菌サンプルを用いて、電子顕微鏡で観察した。
1万枚以上の電子顕微鏡画像を用いた深層学習により、薬剤耐性菌と非耐性菌を90%以上の正答率で判別できた。判断根拠を可視化する技術Grad-CAM法で判別根拠となった注目領域を確認したところ、外膜領域に集中しており、目視の結果と一致した。
また、薬剤耐性菌の画像特徴と遺伝子発現データの相関について計算したところ、外膜を構成するリポタンパク質など、複数の膜構成に関わる遺伝子が高い相関を示すことが分かった。
細菌の薬剤耐性獲得については、遺伝子レベルでの研究は進んでいるものの、形態に関する研究は少ない。今回の研究成果は、薬剤耐性化における細菌の形態、遺伝子、耐性化因子の変化について、機械学習を用いて複合的に理解する一助となる。また、形態から薬剤耐性能を自動予測する技術開発につながることが期待される。
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