京都大学は、体色が白いワラビーが生まれる遺伝的原因を解明した。メラニン色素の合成に関与するチロシナーゼ遺伝子の配列に、無関係な転移因子が挿入していることを明らかにした。
京都大学は2022年1月18日、体色が白いワラビーが生まれる遺伝的原因を解明したと発表した。メラニン色素の合成に関与するチロシナーゼ酵素を作るための遺伝子の配列に無関係な転移因子が挿入したことで、チロシナーゼ遺伝子の発現に影響が生じメラニンのない体色になる。2015年に、のいち動物公園(高知県香南市)で生まれた白いワラビー「リリー」を対象とした共同研究による成果だ。
チロシナーゼ遺伝子がコードするチロシナーゼは、メラニン色素合成の最初の段階を担う酵素だ。
リリーのチロシナーゼ遺伝子について調べたところ、余分な遺伝子が挿入されていることでタンパク質への翻訳が途中で終了してしまい、本来の長さのチロシナーゼ酵素が合成できずにメラニンを生成できないことが明らかとなった。
挿入されている余分な遺伝子は、ウイルスと同じ仕組みで移動するレトロトランスポゾンというDNAで、これまでに知られていないタイプの転移因子だった。
リリーの母親は通常の体色をしており、父親は不明だがおそらく通常の体色だと推測されている。両親がともに潜性(劣勢)の変異型チロシナーゼ遺伝子を有しており、リリーが両方の遺伝子を受け継いだことで、表現型として体色変化が現れたと考えられる。
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