受け取った3D CADデータをインポートしたら形状が破損していた……テルえもんの3Dモノづくり相談所(7)(2/2 ページ)

» 2022年01月17日 10時00分 公開
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データ交換の方法

 異なる3D CAD間でデータを交換する際、そのままダイレクトに独自のデータフォーマット(=ネイティブデータ)を読み込める場合と、交換用のフォーマットに変換してやりとりする場合があります。

 3D CADには、形状の生成/編集/削除/演算などを処理する「モデリングカーネル」があります。このカーネルには、独自に開発されたものと汎用(はんよう)的に開発したものがあります。汎用的なものには「Parasolid」や「ACIS」などがあります。3D CADはモデリングカーネルを核に、さまざまなコマンドがプログラミングされています。つまり、使用されているカーネルが違うと、3D CADの仕様も当然異なります。例えば、曲面表現の違い、幾何表現の違い、モデリング許容値の違いなどです。

 もし、異なる3D CADであってもカーネルが同じであれば、カーネルのフォーマットでデータを交換することが望ましいでしょう。一方、カーネルが異なる場合は、使用するCAD環境に依存しない中間フォーマットでデータ交換するのが一般的です。ちなみに、主な中間フォーマットとしては「IGES」や「STEP」があります。また、2D CADでは「DXF」「DWG」が多く用いられています。

異なる3D CAD間での3つのデータ交換方法 図3 異なる3D CAD間での3つのデータ交換方法[クリックで拡大]

 こうした中間フォーマットでのやりとりですが、3D CADから中間フォーマットへ、中間フォーマットから3D CADへの“2回の変換”が行われるということは、それだけ誤変換のリスクも高まります。そのため、より安全なやりとりを実現するには、

  1. 独自のデータフォーマットが扱えるのであればダイレクトに読み込む
  2. モデリングカーネルが同じであればカーネルのデータフォーマットで交換する
  3. 上記2つの方法がとれない場合は中間フォーマットを用いる

というアプローチが望ましいといえます。

 実際、設計現場などではこうした方法で3Dデータのやりとりが行われているわけですが、初めて受け渡しする相手などに対しては、試験的にやりとりを行ってみて、その状況に合った最適な方法を選び、運用すべきでしょう。例えば、同じ中間フォーマットでも、IGESだとエラーが起きるがSTEPだと良好に読み込めるといったこともあり得ます(もちろん、その逆も)。

データに不具合がある場合の対処法と事前対策

 3D CADのデータ互換性の問題は、起こり得る事象だと考えておくことが重要です。万一、不具合が起きた場合は、まず別フォーマットでのデータの受け取りを検討しましょう。ただ、どうしても別フォーマットが受け取れない、あるいは、どうやってもデータに破損が出てしまうようであれば、前回紹介した「サーフェス機能」を使用して面を作り直すなど手動での修復を行うか、専用ソフトウェアを使用して修復する方法をとります。

 データ交換するための専用ソフトウェアは、3Dデータの検証や修正(ヒーリング)機能に特化しており、受け取る3D CADにマッチした形式に変換/修正してくれます。手動による修正の手間や時間的ロスを減らせるので、必要頻度に応じてソフトウェアの導入を検討してもよいでしょう。

アルモニコスのトランスレータ「spGate」の操作画面 図4 アルモニコスのトランスレータ「spGate」の操作画面[クリックで拡大]

 3D CADの中には、自動修復機能が搭載されているものもあります。新しく3D CADを導入する際、さまざまなデータフォーマットを受け取る可能性があるのであれば、読み込めるデータフォーマットの種類や修復機能の充実度合いなども選定ポイントの1つになってきます。

 なお、3Dデータを手動や自動で修復する場合は、本来の形状と異なったものになってしまわないように、相手側と確認しながら十分注意して作業を進めてください。

 また、ソフトウェアの機能に頼るだけではなく、第三者が3D CADデータを受けとった際に困らないようモデリング手法や運用方法をあらかじめルール化しておくことも重要です。できるだけ微小な面や、面がねじれやすい鋭くとがった三角形の面を作らないといったように、不具合につながるモデリングを避け、エラーを未然に防ぐ運用を心掛けてください。 (次回へ続く

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筆者プロフィール

テルえもん/本名:小原照記(おばら てるき)

いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。


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