連載「テルえもんの3Dモノづくり相談所」では、3Dモノづくりを実践する上で直面する“よくある課題”にフォーカスし、その解決策や必要な考え方などについて、筆者の経験や知見を基に詳しく解説する。第8回のテーマは「フィレット作成の基本的な考え方」についてだ。
皆さん、こんにちは! “テルえもん”こと、小原照記です。本連載「テルえもんの3Dモノづくり相談所」では、3Dモノづくりを実践する上で直面する“よくある課題”にフォーカスし、その解決策や必要な考え方などについて、筆者の経験や知見を基に詳しく解説していきます。
それでは早速、今回のテーマを見ていきましょう。
3D CADでフィレットの面がうまく作れません……。
3Dモデルの角張った部分を滑らかに結んで丸める面を「フィレット面」といいます。フィレット面は部品の強度を高め、加工作業を容易にするために利用される他、意匠的な観点からもよく用いられます。
3D CADでモデリングをしている際、何でもないような部分であってもなかなか思うようにフィレットを作成できず、作業が先に進められない……といったことに直面する場合があります。実は、モデリング操作の中でもフィレットは難しい作業に分類されます。
例えば、フィレットの作成方法は製品形状によって異なりますし、フィレットを作成できない箇所への対処方法もその都度違います。また、どのような方法でフィレットを作成したかによって最終形状に違いが出たり、フィレットをかける順番によって形状が変わってきたりもします。要するに、フィレットはモデリング技術と経験が大きく反映される作業といえるのです。
というわけで、今回は「フィレット作成の基本的な考え方」について詳しく説明していきます。
フィレットは一定の半径値で作成するのが基本ですが、使用する3D CAD環境によっては、半径値を可変させることができたり、隣り合う3つの面に接するフィレットを作成できたりするものもあります。
先ほども述べた通り、フィレットをかける順番によって形状が変わってしまうことがあります。そこで覚えておきたいのが、フィレットを作成する順番です。一般的には、以下の3つのルールに従ってフィレットをかけるのがよいとされています。
以下、それぞれ実例を紹介しながら、フィレットをかける順番による作成結果の違いを詳しく見ていきましょう。
図1の「形状I」に対して、R10の部分からフィレットを作成した場合、図に示した通り、「折れ」が発生します。そして、この状態でR20のフィレットをかけるとコーナー部に「三角面」が作成されてしまいます。3D CADでは“三角面はあまりよくないもの”とされており、前回紹介した「PDQ(Product Data Quality)」に大きく影響します。
三角面の全ての制御ポイントが頂点で完全に一致していれば問題ないのですが、現実的には演算誤差が生じてしまい、頂点付近の曲面に「しわ」や「ねじれ」が発生する可能性があります。特に、作業した3D CADとは異なる3D CAD環境とのデータ交換の際にこうした不具合が生じやすくなります。
では、順番を変えて、R20からフィレットを作成したらどうでしょうか。このとき、エッジが「接線連続」となることで、R10のフィレットを作成しても三角面はできません。
フィレットでエッジを選択する場合、1本のエッジを選ぶと接線連続になっているエッジが自動で認識されるので、1本1本エッジを選択する手間を省くことができ、作業時間の短縮にもつながります。
フィレットをかける順番を考える場合、「フィレットを作成した際に接線連続の形状になるか」をイメージして行うとよいでしょう。
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