コロナ禍による影響も2021年は続いたといえるでしょう。日本では現在は落ち着いた状況ですが、オミクロン株なども含め新たな変異株が今後登場する可能性も含めれば予断が許されない状況が続きます。その中で、工場としてもリモート対応への関心が高まり、実際に活用が進んだ1年だったといえます。
7位にランクインした「技術者が行けない! タイでの新製品量産を遠隔立ち上げしたOKIデータの挑戦」はこうした工場のリモート対応への取り組みを紹介したものです。OKIデータでは新たな戦略製品としてカラーLEDプリンタを立ち上げましたが、生産を行うタイにコロナ禍で技術者が送れない状況が生まれました。こうした中でどのようにリモートで体制を整え、無事に量産体制を立ち上げたさまざまな苦労と実現のポイントについて触れています。
製造現場では「現地現物現実」が基本で、これらは今後も変わるものではありません。しかし、物理的な制約が今後も断続的に加わる可能性がある中で、実際に人が現地に入らなければできない作業と、デジタル技術で代替できるところを切り分けていく必要があります。その中でデジタル技術が代替できる場合は、リモート対応が可能となります。まだまだ確立されていない部分も多いのですが、今後はさらに洗練された形になってくると見ています。
2020年まで多くランクインしていたスマートファクトリー化に関する記事としては、人気はあるもののトップ10にはランクインしていません。逆にスマートファクトリー化の隙間を埋めたり、ある部分を取り出して具体的に掘り下げたりする記事がランクインしたのが特徴的でした。
その象徴的なものが、2位と9位に入った「パナソニック新潟工場の現場を変えた、たった4人の『からくり改善』【前編】」と「パナソニック新潟工場の現場を変えた、たった4人の『からくり改善』【後編】」です。これはパナソニック新潟工場で進めているからくり改善(※)の活動を紹介したものです。
(※)「からくり改善」は日本プラントメンテナンス協会の登録商標です。
FAメールマガジンの編集後記などでも紹介しましたが、パナソニック新潟工場はパナソニックにおけるスマート工場化のモデル工場の1つとされる先進工場ですが「人手とハイテク化の間を埋めるもの」と「従業員のモチベーション」の2つの意味からからくり改善に取り組んでいるとしています。スマート工場化を進めるのが当たり前のものとして広がりつつある中で、そこで失われていくものを埋めるという観点が必要だという点で、新たな視点を得られた記事だと考えます。
さて、ここまで2021年公開記事に限定してランキングを見てきましたが、MONOist FAフォーラムの過去の記事も含めた全ての記事の中で2021年に最も読まれた記事は何だったのでしょうか。
1位となったのは「半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか」でした。この記事は2018年公開記事の中で年間1位となった記事なのですが、2019年、2020年に引き続き、2021年もトップとなりました。経済安全保障としての半導体産業が注目を集める中、過去の日の丸半導体衰退の歴史を総括する動きも強まり、そうした中での注目も高まったのかもしれません。
ちなみに3位には「いまさら聞けない EtherCAT入門」が入りました。こちらは2016年、2017年、2018年と3年連続で年間トップとなった記事ですが、2016年のトヨタ自動車の採用発表以降、継続的に高い関心が続いているといえます。
その他では、MONOistでは人気の「いまさら聞けない」シリーズなど、基礎知識を紹介した記事が人気でした。2021年総合ランキングトップ10は以下のようになります。
さて、コロナ禍に加え、半導体不足を含むサプライチェーンの混乱に大きな影響を受けた2021年ですが、これらの動きは2022年も続くと見られています。一方で混乱が続く中でも工場の自動化やスマート化の動きは着実に広がっており、より具体的な動きや隙間を埋めるような動きが出てきています。それが記事ランキングにも反映されています。MONOistでは2022年も引き続き、自動化やスマート化により、柔軟でしなやかな強さを持ち、働きがいのある製造現場の実現に向け情報発信を進めていきます。引き続きよろしくお願いいたします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.