情報通信研究機構は、携帯電話基地局などからの電波ばく露レベルの大規模かつ長期測定を実施した。同一地域の10年前との比較では、電波ばく露レベルは上昇傾向にあったものの、電波防護指針値よりも十分に低いレベルにあった。
情報通信研究機構(NICT)は2021年12月7日、日本では初という、携帯電話基地局などからの電波ばく露レベルの大規模かつ長期測定を実施したと発表した。同一地域の電波強度を10年前と比較したところ、電波ばく露レベルは上昇傾向にあった。
調査は2019年度に開始し、これまでに市街地(東京都内)、郊外(東京近郊)、地下街(東京都内)の500地点以上で測定を実施した。偏りを抑えて大規模かつ詳細にデータを取得するため、電界プローブによる定点測定、携帯型測定器を持った個人による測定、電測車による広域測定などを組み合わせた。
測定した周波数ごとの電波ばく露レベルを積算し、カラーマップで表示したところ、市街地は郊外よりも電波ばく露レベルが高い傾向にあった。地下街は、郊外より若干大きい程度だった。
また、各測定地域で測定した100カ所のデータを統計処理した結果、市街地の方が郊外よりも電波ばく露レベルが高く、中央値で約4倍の差が出ている。同一地点で約10年前と比較すると、市街地と郊外では中央値で約3倍上昇、地下街では約100倍上昇している。地下街については、10年前は携帯電話基地局からの電波が届かない場所があったが、今回は全測定地点で電波が届いていたことが理由と考えられる。
これらの結果から、電波ばく露レベルは上昇していることが分かった。一方で、電波防護指針値と比較すると、各地域とも中央値で約1万分の1以下、最大でも約1000分の1の値となり、十分に低いレベルであることが示された。
海外との比較では、2020年に英国が国内22カ所で実施した測定結果と検証。電波ばく露レベルの最大値は、英国の約15分の1となった。
現代では電波を利用したさまざまな機器が存在し、電波防護指針に基づいて人体に悪影響を及ぼさない範囲で利用されている。一方、海外では第5世代携帯電話(5G)からの電波による健康不安が5G展開の障害になっている事例もあり、国内でも一部で不安視する声がある。
今回の調査は、国内で5Gが本格導入される前の結果のため、今後は5Gによる電波ばく露も対象に、長期的に測定を継続、公表していく。
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