デジタルツインを実現するCAEの真価

ジェネレーティブデザイン活用で、水上太陽光発電フロートの短期設計を実現メカ設計ニュース

Triple Bottom Lineは、水上太陽光発電フロート開発プロジェクトの企画設計を担当し、ジェネレーティブデザインを活用して500以上ものデザイン試案の検討と性能解析を5人の担当者で同時に進め、約5カ月間で設計を完了させたことを発表した。

» 2021年12月14日 13時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 Triple Bottom Lineは2021年12月9日、水上太陽光発電フロート開発プロジェクトの企画設計を担当し、ジェネレーティブデザインを活用して500以上ものデザイン試案の検討と性能解析を5人の担当者で同時に進め、約5カ月間で設計を完了させたことを発表した。

太陽光発電パネルを搭載した水上太陽光発電フロート 太陽光発電パネルを搭載した水上太陽光発電フロート[クリックで拡大] 出所:Triple Bottom Line

 同プロジェクトは、再生可能エネルギー事業を推進する国内企業から委託されたもので、2021年秋から同社の設計を基にした量産展開が開始されているという。

ジェネレーティブデザインを活用した設計アプローチ

 湖や貯水池などの水上スペースを活用する水上太陽光発電フロートは、日照を遮る障害物が少なく、冷却効果によって陸上に太陽光発電パネルを設置するよりも高い発電量が期待されることから注目を集めている。

 今回、同社が設計を手掛けた水上太陽光発電フロートの開発プロジェクトでは、今後の急速な市場拡大を視野に、要となるフロート部において「製造コスト削減」「組み立ての合理化」「環境影響低減による安定性向上」という3つの課題解決に取り組んだという。

 また、プロダクトのサイズや設置場所の規模から、試作検討や試験の実施が容易ではなく、限られた予算で急速な市場拡大に備える必要があることから、同社は全体の機構と課題点を鑑みて、ジェネレーティブデザインを活用した設計アプローチを採用。これにより、500以上ものデザイン試案の検討と解析を低コストで同時に進めることができ、企画設計期間の圧縮と設計上要求される性能の獲得の両立を実現した。

ジェネレーティブデザインによる新規設計/検討/解析の画面イメージ ジェネレーティブデザインによる新規設計/検討/解析の画面イメージ[クリックで拡大] 出所:Triple Bottom Line

 水上太陽光発電フロートは長時間、屋外で利用されるため、通常であれば複数の試作模型を用いた実体実験が必要となる。これら工程を一般的な設計アプローチで進めた場合、同社試算によると2年以上要するところ、ジェネレーティブデザインやCAE解析を活用したリーンイテレーションによって、約5カ月という短期間での設計を、わずか5人の担当者(デザイナー2人、解析エンジニア1人、検査品質管理2人)で成し遂げた。

パーティングラインの位置を喫水線上に設定、CAE活用も

 今回設計した水上太陽光発電フロートは、一般的な市場品と比較して構造強度を2倍に設定し、メインフロートの構造を三胴船構造とした。これにより、水上での動揺を抑制でき、安定した発電が可能となる他、空気室を3つに分けたことで、万一、中空構造である内部が浸水しても載荷した太陽光発電パネルの水没を防ぐなど、水上太陽光発電で求められる長期運用の安定性向上が図れる。

 単体の製造コストについては、前述のような機能向上を行ったにもかかわらず、一般的な市場品と同等程度に抑え、さらに部品規格の統一化などを含む組み立て品質の向上を図ることで、施工の合理化にもつなげられたとしている。

 また、フロートの製造はブロー成形で行われるが、パーティングライン(金型が分割される位置)を想定される喫水線(船体と水面が交わる線)上に設定。これにより、構造上の強さが求められる水上部の壁厚を増し、フロート内部の圧力を一定にするために冷却効率が求められる水中部の壁厚を薄く成形することを可能にした。

水上太陽光発電フロートのフロート単体(横面) 水上太陽光発電フロートのフロート単体(横面)[クリックで拡大] 出所:Triple Bottom Line

 さらに、フロート同士を結合して本体を守るバンパー部はCAEによる解析を実施。その結果を踏まえ、発電モジュールを形成する際に特にストレスがかかる個所、また浸水に対する止水壁や適宜剛性が必要とされる太陽光発電パネル取り付け部位、発電モジュールを固定するためのアンカープラグ接続部位などにリブ構造を施しているという。

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