ダッソー・システムズ主催のオンライン年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2021」において、「ジェネレーティブデザインの検討事例」と題し、トヨタ自動車の取り組みを紹介する業界別セッションが行われた。トヨタ自動車はなぜ「Function Driven Generative Designer」を導入したのか。その背景や狙いについて語られた。
ダッソー・システムズ主催のオンライン年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2021」(会期:2021年6月15日〜7月9日)において、「ジェネレーティブデザインの検討事例」と題し、トヨタ自動車の取り組みを紹介する業界別セッションが行われた。
同セッションは対話形式で実施され、トヨタ自動車 モノづくり開発センター 開発試作部 モビリティ先行技術室 新価値商品化グループ グループ長の田中悠人氏の他、ダッソー・システムズの代理店パートナーで、トヨタ自動車へのソリューション導入支援などを行ったプログレス・テクノロジーズ デジタルソリューション事業部 デジタルソリューション技術部長の村木重和氏、ダッソー・システムズ CATIA インダストリープロセスコンサルタント シニアマネージャーの高橋直希氏が登壇した。
司会進行はダッソー・システムズの高橋氏が務め、「3DEXPERIENCE CATIA」が提供するロール(機能群)の1つである「Function Driven Generative Designer」(以下、GDE)を活用したトヨタ自動車の取り組みや狙いについて紹介した。
トヨタ自動車が導入を開始したGDEは、シミュレーション技術とモデリング技術を融合させた新たな設計アプローチ「ジェネレーティブデザイン」を実現するものであり、現在、ダッソー・システムズが提唱している「コグニティブオーグメンテッドデザイン戦略」を体現する最新ソリューションとして位置付けられている。
GDEが提供するジェネレーティブデザイン機能について、ダッソー・システムズの高橋氏は「コンピュータが設計を支援する従来のCAD(Computer Aided Design)からさらに進化を遂げ、ターゲットとする製品性能をあらかじめ設定することで、コンピュータが最適な形状を計算し、提案してくれる新たなテクノロジーだ」と説明する。
ジェネレーティブデザインは、設計者が要求する製品性能を達成しながら、劇的な軽量化を実現できるテクノロジーとして注目されており、特に3Dプリンタでの製造と組み合わせた活用の検討が盛んに行われている。また同時に、3Dプリンティング技術の特性を最大限に引き出すための設計の考え方として「DfAM(Design for Additive Manufacturing)」に関するノウハウも不可欠となるが、GDEはDfAMの考え方に基づく、ジェネレーティブデザイン機能を提供するという。
トヨタ自動車の田中氏が所属する開発試作部は、同社のクルマ/モビリティづくりを初めてカタチにする“生誕地”としての役割を担っており、さまざまなプロジェクトを推進している。そうした中、3Dプリンティング技術とジェネレーティブデザイン手法を組み合わせたより付加価値の高い製品づくりの実現に向けた検討が始まり、「Abaqusをソルバーとし、各種製造要件も加味できる強力な形状最適化技術を備えたGDEに興味を持った」(トヨタ自動車 田中氏)という。
また、これまで保有していた最適化ツールでは作成したメッシュをCADモデル化する際、作業が煩雑となり時間もかかるという課題を抱えていたこともあり、得られた解(最適形状)から効率良くCADモデルを作成できるGDEを採用することで、従来課題を解消しようと考えた。
GDEの利用環境として、トヨタ自動車はクラウド版の3DEXPERIENCE CATIAを導入。「先進的な取り組みを実践する上では、最新のCATIAの機能を活用した設計は欠かせない。意識せずとも常に最新環境にアップデートされるクラウド版のメリットを生かし、GDEの機能を活用いただいている」と導入支援を行ったプログレス・テクノロジーズの村木氏は語る。
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