では、トヨタ自動車は具体的にどのような用途でGDEを活用しようとしているのだろうか。
この問い掛けに対して、トヨタ自動車の田中氏は「お客さまの気持ちやライフスタイルに寄り添った企画や、モノづくりのうれしさを最大限に引き出せる新価値製品の設計手法としてGDEの活用を推進している。例えば、今までにない形状で、かつ複数の機能を1つのパーツに持たせ、それを限定車や特別仕様車などに適用することが考えられる。また、顧客により愛着を持ってもらえるように見た目に美しく、人間工学的な要素も取り入れた製品設計にGDEを活用しようと検討している」と説明する。
このような新たなモノづくりを検討、実現する上で、GDEは最適なツールになるという。「GDEは、パーツ単体のみならず、アセンブリ全体のパーツを一度に最適化する機能も備えており、設計要件や製造上の制約を考慮した非常に優れた形状を導き出すことができる。設計思想通りに機能を実現することはもちろんのこと、これまでにない魅力的で、有機的な特長を備えたパーツを設計することができる」(プログレス・テクノロジーズ 村木氏)。
また、3Dプリンティング技術とジェネレーティブデザイン手法を組み合わせた新たなモノづくりの実践に向けて、トヨタ自動車では開発プロセスの改革に向けた検討も進めているという。「GDEの活用を進める中、開発プロセス全体をどのように改革すべきかの検討にも着手している。自動車産業が『100年に一度の大変革期』を迎える中、いかに早く、お客さまに喜んでもらえる製品を世に送り出せるかがより一層求められている。開発の初期段階からモノづくりを考慮した設計を行うなど、一気通貫の設計プロセスの実現を目指す取り組みを始めている」(トヨタ自動車 田中氏)。
さらに、今後の展望について、トヨタ自動車の田中氏は「より走りにこだわるとともに、機能美を有するクルマ、多種多様なサービスを提供するモビリティ、お客さまの五感に訴え掛ける人間工学を意識した製品、個に寄り添ったカスタマイズ品などの実現を目指し、GDEによるデジタル最適化プロセスと3Dプリンティング技術による素早い具現化で、これらを強力に推進していきたい」と述べる。
※【訂正情報】:上記画像のキャプション部に事実と異なる箇所がございました。訂正してお詫びいたします。[2021/6/22更新]
そして、トヨタ自動車のこのようなチャレンジに対して、プログレス・テクノロジーズの村木氏は「当社が持つDfAMのノウハウを基に、全力でトヨタ自動車の取り組みを支援していきたい。単なるツール導入ではなく、設計に必要となる設計要件の体系化、CATIA V5で設計したCADモデルの活用などを含め、GDEを中心とした最適化プロセスのデジタル化と定着化を今後もサポートする。また、既に検討を開始しているラティス構造の設計機能や造形パスの生成、CAEを用いた造形シミュレーションなどの活用によって、バーチャルエンジニアリングによる高度なデジタル最適化プロセスの実現を支援していきたい」と語る。
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