「Fusion 360」のジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違いがよく分からないので、オートデスクに行って、Fusion 360のエバンジェリストの藤村祐爾さんに会って話を聞いてきた。
オートデスクの「Fusion 360」のエバンジェリストである藤村祐爾さんに、ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違いについて聞いてみました。
読者の皆さま、酷暑の中いかがお過ごしでしょうか? いつの間にか立秋も過ぎ、残暑お見舞い申し上げます。あまりにも暑いので、身の回りのものの熱伝導・熱応力連成解析をはじめたいと思ったくらいです(うそ※)。
このままいくと与太話で終わりそうなので早速本題に入りたいと思います。
前回はFusion 360のシミュレーション(解析)機能の1つであるシェイプ最適化機能の話をしました。さて、そのFusion 360のユーザーであれば、年間サブスクリプションでUltimate版を使用しているユーザーについては、ジェネレーティブデザイン(Generative Design)なるものが使えるようになっていることはご存じの方も多いと思います。
「将来的には、Fusion 360に組み込まれる」という情報も聞いておりますが、現在のところは別ソフトウェアになっています。
さて、この機能のデモなどを既にご覧になっている方も多いかもしれませんが、ご覧になった方も、出来上がりの形状だけを見ると、これまで話をしてきたトポロジー最適化とたいして違いがないようにも見えます。実際に私もそう思いました。何かそんなに新しいのか疑問が湧いている人も少なくないのではないでしょうか。
ということで先日、オートデスクに行って、Fusion 360のエバンジェリストの藤村祐爾さんを訪ねてまいりました(なもんで今回の記事は一部会話の形式でお届けします)。
水野(以下M) いきなりですが、今回の対談、なにかデジャブのような気がしませんかね?
藤村(以下F) デジャブも何も……。思いっきりそうなんじゃないですか?
M あ、やっぱり覚えてます? あの「solidThinking Inspired」の記事?
F もちろん。前職の時(※)か。あれいつでしたかね?
M 2011年。「Macで楽しくて本格的な3Dモデリングしよう」でしたね。solidThinkingのモデリングやレンダリングの機能が中心の紹介だったけど、かなりまじめにInspiredのMorphogenesisの機能を使って、今回のトピックのGenerative Designのような形状作りましたね。
F えー? もう7年もたっちゃったんですねぇ……。
M ところで、その時に「Morphogenesisで生み出される形状はデザイナーにとってのインスピレーションになる可能性があるけど、一方でそこはデザイナーが自分で一番やりたいことでもある……」というなんだか微妙な言い方をしていたけど、それに対する考え方は7年後の今、出ましたか?
F トポロジー最適化で出てきた結果について、皆、形を見ますけど、でも実際に見ているのはストラクチャではなくて力の流れですよね。出てきた結果はあくまでも参照用であって、そこから自分のテイストで作り直すことが必要だと思います。それは手間ではなくて、デザイナーとして楽しみだと思っています。その軸は自分で外れていないと思っています。
M 形に着目するのではなく、あくまでも力の流れですね。それはそもそも解析を行う上で適切な結果の見方だと僕も思うので納得ですね。
F Fusion 360だと簡単にできちゃいますけど、それゆえに出てきた結果をそのまま使っちゃう人が増えちゃうっておかしいなと思います。デザイナーの立場で言えば、そのように出てきた結果を自分のテイストに落とし直すのが才能だし、デザイナーの価値だと思います。そこから導かれたものが意味のあるデザインでありストラクチャだと思います。
M 確かにツールは今まで経験だけに頼っていたところを、視覚化してくれたり数値化してくれるツールですもんね。
M ところで、トポロジー最適化とジェネレーティブデザインの違いってどんなところ何でしょうね? 出てきた結果って、見た目は変わらないように見えるんだけど……。
F 基本的な考え方はトポロジー最適化と同様と考えてもらっていいと思います。でも、従来のトポロジー最適化では1回の解析では1つの条件で1つのパターンしか検討できません。でも、ジェネレーティブデザインならクラウドのソルバーを使うことによって、膨大な数のパターンを検討し、妥協することなく拾ってこられるのですごいと思っています。
M なるほどねぇ。それから、先日の「Fusion 360 Academy」(Fusion 360のカンファレンス)では3Dプリンティング視点での話も目立ったけど。
F トポロジー最適化自体は歴史のある技術ですし、既に製造業のシリアスな現場での実績のあるソフトウェアもあって、そういう観点からはわれわれは後発です。既に実績のある他のソフトでは、例えば、金型のアンダーカットなど製造要件も考慮することできますよね。オートデスクのジェネレーティブデザインは、3Dプリンティングが世の中に出てきてから登場したソフトです。そういう意味では、製造方法としては3Dプリンティングだけに割り切って特化しても良いと思っています。
M なるほど、他にも何か特徴がありますか?
F 結果をダウンロードして、しかもダウンロードした時点でソリッドのデータになっているのが他とは違うと思います。
M 確かにそれはうれしいですね。ソリッドなら、即座にCADで編集できますもんね。
F あと個人的には「Dynamo」(オートデスクのビジュアルプログラミングツール)とくっつけられたらもっと面白いことできるかと。アルゴリズムデザインと自分のデザインが融合したらもっと新しい世界が広がると思います!
……ということで、藤村さんとの楽しい話はもっと続いたんですが。
まだジェネレーティブデザインの具体的な流れを説明していなかったので、このあたりで簡単に流れを説明したいと思います。
ただし今回、筆者にジェネレーティブデザインを使う環境がなかったので、藤村さんからご提供いただいた資料に基づいて流れを簡単に説明します。
今回は、このようなモデルに対して、複数の荷重条件を考慮した解析を行います。
最初のステップは3Dのデータの準備です。Fusion 360など3D CADでジオメトリを準備しておく必要があります。
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