東北大学は、1カ月間の宇宙旅行から帰還したマウスの腎臓で、血圧と骨の厚さを調節する遺伝子の働きが変動していることを発見した。また、宇宙旅行で血液中の脂質が増加し、腎臓で脂質代謝に関係する遺伝子の発現が増加することも分かった。
東北大学は2021年11月17日、1カ月間の宇宙旅行から帰還したマウスの腎臓で、血圧と骨の厚さを調節する遺伝子の働きが変動していることを発見したと発表した。また、宇宙旅行で血液中の脂質が増加し、腎臓で脂質代謝に関係する遺伝子の発現が増加していた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)、筑波大学との共同研究による成果だ。
今回、遺伝子解析したのは、2018年に宇宙旅行を達成した遺伝子組み換えマウスの腎臓だ。このマウスは、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に31日間滞在している。
地上では、重力に逆らって血液を循環させたり、姿勢を維持したりする必要がある。一方、宇宙空間は重力がほとんどないため、宇宙に滞在すると血圧や骨の厚さが変化する。
研究グループでは、腎臓が血圧と骨量の調節を担うことに着目。宇宙旅行から帰還したマウスの腎臓を解析したところ、血圧と骨量の調節に関わる遺伝子群の発現が変動していた。
宇宙のような微少重力環境では、重力への抵抗が必要なく、基礎的なエネルギー消費が低下する。そのため宇宙旅行中は脂質が余剰となり、腎臓が余剰脂質を代謝、排泄する役割を担っていることが分かった。
宇宙開発が進み、近い将来、人類が気軽に宇宙旅行をする時代が期待されている。一方で、宇宙は地球と大きく環境が異なるため、宇宙環境が人体に与える影響を理解することが必要だ。今回の結果から、宇宙環境で腎臓が重要な役割を担うことが明らかとなり、宇宙旅行時に腎機能を管理することの重要性が示された。
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