「ただ作るだけのモデリング」「ただ形を作ればいい」という、その場、その場の継ぎはぎ作業ではなく、部品の役割を考えながら、設計意図を関連付けるモデリングが理想です。
よくありがちなこととして、1つのスケッチにいろいろな設計要素を組み込み過ぎると、後からの設計変更が大変になったり、1つのフィーチャに複数の設計機能を盛り込んで形状を作成してしまうと、別の設計機能に切り替える変更が入ったときに大変な思いをしたりする場合があります。
1つのフィーチャは、1つの設計機能に対応させましょう。一見すると面倒で、モデル作成に時間がかかってしまうように思えますが、後から設計変更があった場合、シンプルな形状を組み合わせて作成しておいた方が、格段に修正対応しやすくなります。
ここまで紹介したエラーの考え方は、ヒストリー型のパラメトリックモデリングの場合に起きるもので、ノンヒストリー型やダイレクトモデリングの場合、リンク関係によるエラーは起きません。ただし、リンク関係がないということは、連動して他の面や部品の修正が行われないため、設計変更に時間がかかってしまうケースも考えられます。
“設計変更しやすいモデリング”の考え方の基本について理解できたとはいえ、最初はなかなかうまく寸法を定義できなくて、定義していた寸法値を変更したら意図しない形状になってしまった……というトラブルに直面することもあるでしょう。ただ、最近の3D CADにはダイレクトモデリング機能が搭載されているものが多く、定義していた寸法値とは関係なく、面を伸ばしたり、縮めたりできます。こうした機能を使用することでエラーを回避できる場合があります。
理想的には、考えられる設計変更を予想し、設計変更が起きても対応しやすいようにモデリングを行い、作業履歴についてもスケッチ名やフィーチャ名を分かりやすく変更しておくことです。ただし、これを意識し過ぎると本来の設計が進まないこともありますので、あくまで基本として理解し、実際の業務の場面で臨機応変に対応してください。
エラーを出さない、少なくするということも大切ですが、エラーが起きたときに、どう対処するかということも重要です。前回説明したエラーが起きたときの対処法も併せて理解を深めておいてください。
そして、エラーや警告を放置しないことも重要です。形状ができているから大丈夫と思っていても、きちんとリンクが連動していないことで、設計値通りの形状ができていない箇所が潜んでいたり、後々大きな問題に発展したりする可能性があります。
エラーをゼロにすることは難しいので、今回紹介したことを基本的な考え方として、設計変更によるエラー修正の工数をできるだけ減らせるように経験を積んでいってください。
将来的に、AI(人工知能)がエラーを自動修復してくれる、そんな夢のような機能が搭載された3D CADが登場するといいですね。5年後くらいにはそういった機能が実装されているのでは? と妄想を膨らませております。 (次回へ続く)
テルえもん/本名:小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.