製造業DXに必要なPLMの3段階デジタル化DX時代のPLM/BOM導入(2)(2/2 ページ)

» 2021年10月25日 09時00分 公開
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デジタライゼーション

 次にデジタライゼーションですが、これはデジタル化した情報を用いて、業務プロセスを改善、改革することを指します。情報システム部や設計部門などの実務部門が主体となって遂行する、部門規模での業務プロセス改善の取り組みです。

 開発プロセスやPLMで考えると、3D設計やCAEによる解析や、製品情報を管理するPDM※1導入がこれに該当するでしょう。解析は設計部門主導の活動ですが、出図前に検証を行うことで、設計品質を改善できるようになります。PDM導入は設計部門や情報システム部門が主導する取り組みで、デジタル化した設計情報をデータベースで一元管理して、設計情報の共有による業務効率の向上を狙います。

※1:PDMはProduct Data Managementの略で、製品データ管理システムのこと。PLMはライフサイクル全体を対象とするのに対し、PDMは製品データにフォーカスしている。

 これらの例に示したような、部門主導のデジタル情報を活用した業務プロセス改善のことをデジタライゼーションと呼びます。

DX

 いよいよDXです。経営者が主導するデジタル化によるビジネス変革がDXであるとされます。なお、先に掲載した図表1の定義で「恒久的な」という記載がありますが、これは新しいビジネスモデルを組織に定着化させるという意味合いになります。

 開発プロセスやPLMを主軸に考えて、グローバルPLM(国内外全拠点で使用するPLM)やライフサイクルを通じたBOM再構築をDXに分類しました。PLMシステムを企業の国内外で共通利用するためには、国内外全拠点の部品番号などのコードや開発プロセスの標準化が要求されます。全社的な標準化活動が、DXの効果を生み出す土台となるのであり、その上でデジタル化、データベースの統合化を進めるのです。

 ライフサイクルを通じたBOM再構築においても、各部門のBOMのコンセプトを体系化、標準化する必要があります。さらにERPやMES(製造実行システム)、生産設備などと連携させます。顧客やサプライヤーとコラボレーションする場合には、その手順やフォーマットも標準化していく必要があります。

 体系化や標準化といった活動は部門主体でできることではありません。経営者が主導し、各部門の利害関係を調整しながら推進することが要求されます。PLMやBOM構築におけるDXとは、経営者が主導し、全社的に業務を標準化した上で、デジタル技術を活用するBPR※2だと言えます。

※2:BPRとは、Business Process Re-engineeringの略で、組織、プロセス、ITを再設計すること。

デジタル化の3段階をミックス

 今回の総括です。「DX時代のPLM」は、経営者が主導するデジタル技術を活用した全社的なBPRとなるべきです。そしてそれを実行する際の具体的な施策は、これまで解説した3段階のデジタル化をミックスしたものになることが自然であると思います。

 DXの項では標準化や体系化の重要性について言及しました。しかし、それのみを計画、実践することが重要なのではありません。依然として社内に残る紙情報をデジタル化するとともに、部門の業務効率を高める要素を施策に盛り込んでいかなければなりません。企業グループ全体で共通利用するために、開発プロセスや部品番号などのコード体系、管理するドキュメント体系の標準化、拠点の既存システム(MESやERP)との共存などを考慮した計画を立案することが重要となるからです。

 次回は、DXを実現するための、組織やITの結合状態、プロセスの標準化について解説する予定です。楽しみにしてください。

⇒前回(第1回)はこちら
⇒次回(第3回)はこちら
⇒連載「DX時代のPLM/BOM導入」バックナンバー

著者プロフィール

三河 進
株式会社グローバルものづくり研究所 代表取締役

大阪大学基礎工学部卒業。

大手精密機械製造業において機械系エンジニアとして従事後、外資系コンサルティングファーム、大手SI会社のコンサルティング事業を経て、現職に至る。
専門分野は、製品開発プロセス改革(3D設計、PLM、BOM、モジュラー設計、開発プロジェクトマネジメントなど)、サプライチェーン改革、情報戦略策定、超大型SIのプロジェクトマネジメントの領域にある。また、インターナショナルプロジェクトにも複数従事経験があり、海外拠点のプロセス調査や方針整合などの実績もある。

主な著書

  • 「図解DX時代のPLM/BOMプロセス改善入門」,日本能率協会マネジメントセンター(2022)
  • 「5つの問題解決パターンから学ぶ実践メソッド BOM(部品表)再構築の技術」,日本能率協会マネジメントセンター(2018)
  • 「製造業の業務改革推進者のためのグローバルPLM―グローバル製造業の課題と変革マネジメント」,日刊工業新聞社(2012)
  • 「BOM/BOP活用術」,日経xTECH(2016)
  • 「グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント」,ITメディア社MONOist(2010)など多数

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