本連載では製造業DXの成否において重要な鍵を握るPLM/BOMを中心に、DXと従来型IT導入における違いや、DX時代のPLM/BOM導入はいかにあるべきかを考察していく。第1回は「PLM、BOMとは何か」をまずは説明する。
近年、「設計DX(デジタルトランスフォーメーション)」など、DXと名称がついたIT改革のプロジェクトが多数実施されています。競争力強化のために、業務改革やIT導入を行うことは素晴らしいと思います。が、一方で、「そもそもDXとは何か?」という議論を見かける機会は少ないのではないでしょうか。
本連載では、DXと従来型IT導入における違いをはじめ、製造業DXの成否において重要な鍵を握るPLM(Product Lifecycle Management)/BOM(Bill of Materials)とは何なのか、またDX時代のPLM/BOM導入はいかにあるべきかを考察したいと考えています。よろしくお願いいたします。
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今回はDXについて本格的に考える前段階として、まずPLM、BOMとは何かを説明していきます。
図表1は、PLMの全体的な概念を示しています。PLMとは「Product Lifecycle Management」の略で製品ライフサイクル管理とも呼ばれます。そして、PLMは製品ライフサイクルを通して、製品価値を最大化するための経営手法と考えられています。
図表1の上側は経営手法としてのPLMを表しています。商品企画から設計、調達、製造、保守にわたって、製品ライフサイクル全体をカバーしています。そして、製品はフェーズを通してBOMを核としたモデル上で成長していきます。
商品企画の段階では製品はまだ1つの商品、アイテムとして見なされています。設計が進むと商品はユニット、部品、工程にブレークダウンする形で把握されるようになります。さらに工場に移管されると、調達情報や、製造実績としての品質記録などが付与されます。市場、あるいは顧客に出荷された後は、出荷後の構成となる部品交換や修理の情報が追加され、能動的な保守ビジネスの実現にも貢献するのです。
PLMではさまざまな情報を管理できます。経営的な指標として重要なものの1つが「コスト」です。上流段階から商品としてのコスト目標が設定され、部品や工程別にコスト分解されます。さらに、実績としてコスト目標を達成しているか、乖離(かいり)がある場合はそれに対してどうアクションするか、といったPDCAサイクルにつなげていくことができます。
コストは1つの例ですが、製品開発に関する情報を一元的に集約し、経営的な判断を下せるようにすることが、PLMの目的の1つだといえるでしょう。
図表1の下側に記載されているのは、PLMシステムの基盤や機能の説明です。PLMシステムとは、経営手法としてのPLMを支援するためのシステムのことです。基盤であるデータベースの上にPLMプロセスを支援するアプリケーションが乗っています。
代表的なアプリケーションとしてはドキュメント管理や構成(BOM)管理などがありますが、最近では医療規格や自動車業界のIATF(International Automobile Task Force)、VDA(ドイツ自動車工業会)の品質規格、欧州のRoHS(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)やREACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)など含有化学物質管理に関する法令など、コンプライアンス対応機能をPLMシステムに実装する企業が増えています。
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