続いてはBOMの説明です。BOMはBill Of Materialの略で、直訳すると材料表、部品表となります。BOMは、製品を構成するアセンブリや部品を表現します。
図表2は、代表的なBOMである「E-BOM(Engineering BOM)」「M-BOM(Manufacturing BOM)」がどのようなものかを概念的に示したものです。図左のE-BOMは設計BOMや技術BOMとも呼ばれます。E-BOMは品目や構成情報だけではなく、3Dモデルや図面、仕様書などのドキュメントを関連付けて管理することができます。このため、ある部品品目についてPLMシステム上で検索すれば、履歴を含めた部品の関連情報を一括で入手可能です。
E-BOMは、設計上の最新情報を関係者と常に共有できる点が大きなメリットとして挙げられます。一人で設計しているとそこまで利点とは思えませんが、チームや拠点横断で設計する場合には、最新情報に基づいた正確な設計を遂行することができるため、効果的です。また、部品に含まれる化学物質の含有量などのリスクチェックに活用する企業も増えています。
M-BOMは生産BOMや製造BOMとも呼ばれ、一般的にERPで管理されます(PLMで構成編集され、その後ERPに転送されることもあります)。E-BOMを基に作成されますが、これに加えてM-BOMには「生産マスター」と呼ばれるにふさわしいほどの情報が一元的に集められるのです。
生産工程や調達で中間品を追加する他、自社で調達しない部品構成の削除、設計変更などで部品切り替え時期をコントロールするために有効日などの情報を追加することがあります。さらに、ERPの品目マスターでは、調達、製造、財務、物流に関するさまざまな属性が登録されます。
M-BOMは生産マネジメントを行う上で効果を発揮します。M-BOMの品目には、製造や調達の標準リードタイムが設定されていますが、その情報の精度は、生産計画や生産実行指示の精度に影響を与えます。そのため、実際のデータと乖離(かいり)があればその原因を確認し、リードタイムの見直しや現場改善につなげていかなければなりません。また、リスク管理も可能です。生産時に利用された部品の品番やロット番号を記録することで、トレーサビリティーに利用できます。
BOMについては1回では語りつくせないのですが、まずはエッセンスをお伝えしました。次回は、DXと従来型IT導入の違いについて、解説していきたいと思います。
⇒次回(第2回)はこちら
⇒連載「DX時代のPLM/BOM導入」バックナンバー
三河 進
株式会社グローバルものづくり研究所 代表取締役
大阪大学基礎工学部卒業。
大手精密機械製造業において機械系エンジニアとして従事後、外資系コンサルティングファーム、大手SI会社のコンサルティング事業を経て、現職に至る。
専門分野は、製品開発プロセス改革(3D設計、PLM、BOM、モジュラー設計、開発プロジェクトマネジメントなど)、サプライチェーン改革、情報戦略策定、超大型SIのプロジェクトマネジメントの領域にある。また、インターナショナルプロジェクトにも複数従事経験があり、海外拠点のプロセス調査や方針整合などの実績もある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.