GridDBの採用事例の多くを占めるのが製造業の工場だ。例えば、HDD製造会社の品質管理システムへの適用事例では、それまで使用した高性能DBMS専用機からGridDBへの切り替えを行った。この品質管理システムは、HDDの製造レコードを全件蓄積することを目指していたが、5年間のデータ蓄積量は1.9ペタバイト、1日当たりの登録データ量は267GBと膨大であり、分析用SQLによるアクセス頻度も1日当たり3万回に上っていた。GridDBへの切り替えでは、高性能DBMS専用機以上の性能を標準的なIAサーバで実現することでこれらの要件を満足するとともに、大幅なコストダウンも実現したという。
これに加えて、製造ラインのトレーサビリティーと品質管理システムや半導体工場における不良検出システムの事例がある他、デンソーの「ファクトリーIoT」の名前も挙がっている。工場以外では、電力会社の低圧託送業務システムや、デンソーの北米子会社であるDENSO International Americaの次世代車両管理システムにも採用されている。望月氏は「製造業の工場におけるIoT活用は見える化から分析の段階へ移行しつつある。GridDBを使えば、この分析をリアルタイムで行える点で優位性がある」と強調する。
GridDBは、パブリッククラウドで稼働するマネージドサービスの「GridDB Cloud」の提供を2021年4月から開始するなどの事業展開を広げているが、ソースコードはオープンソースソフトウェア(OSS)として2016年からGitHub上で公開されている。
オープンソース化にはオープンイノベーションによる新たなアイデアや付加価値の創出、ビッグデータ技術の普及促進、他のOSSやシステムとの連携強化を進める狙いがある。GridDBサーバとさまざまなクライアントを連携させるプラグインの提供進めるなどしたところ、2020年ごろからGridDBソフトウェアのダウンロード数が増加し始めているという。
また、オープンイノベーションの観点では、スタートアップのDATAFLUCTが持つ機械学習を自動化するAutoML技術とGridDB Cloudを連携させた、店舗単位の来客数予測を最適化する機械学習ソリューションを2021年4月にリリースしている。今後もこれらのようなオープンイノベーションを推進することで、GridDBのエコシステムを拡大していきたい考えだ。
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