CPSテクノロジー企業を目指す東芝、ソフトウェアはどのように開発しているのか製造ITニュース(1/3 ページ)

東芝が、同社の事業戦略の中核を成すCPSを支えるソフトウェア生産技術について「説明。アジャイルプロセスなどを活用することで、IoT関連のサービスであれば約2週間のスパンでリリースできる体制を構築できているという。基幹系システムなどのソフトウェア開発で重要な役割を占める要件定義プロセスにAIを適用するための取り組みも進めている。

» 2020年10月29日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 東芝は2020年10月27日、オンラインで会見を開き、同社の事業戦略の中核を成すCPS(サイバーフィジカルシステム)を支えるソフトウェア生産技術について説明した。アジャイルプロセスなどを活用することで、IoT(モノのインターネット)関連のサービスであれば約2週間のスパンでリリースできる体制を構築できているという。また、基幹系システムなどのソフトウェア開発で重要な役割を占める要件定義プロセスにAI(人工知能)を適用するための取り組みも進めている。

東芝のデジタルソリューションを支えるTDSL

TDSLの今村大輔氏 TDSLの今村大輔氏 出典:TDSL

 「CPSテクノロジー企業」を掲げて新たな成長を目指す東芝は、社会インフラ、エネルギー、電子デバイス、デジタルソリューションという4つの領域で事業を展開している。これらのうちデジタルソリューションを担うのが東芝デジタルソリューションズ(TDSL)である。TDSLでは、他3つの領域におけるデジタル化を支えるとともに、さまざまな業種向けのソリューションを開発し、IoTやAI、セキュリティなどの最新技術にも対応できるようなソフトウェア開発体制が求められている。

 現代のソフトウェア開発は、ガートナーが提唱する概念「バイモーダル」に基づいて主に2つの様式に分かれている。「モード1」は、既知の情報資産の活用にフォーカスしており、信頼性・安定性を重視するシステム、例えばERPやSCMなどの企業の基幹系システムが対象となる。一方の「モード2」は、新しい問題の解決にフォーカスして、新たな価値、ビジネスの実現を目指すためのソフトウェア開発様式だ。主にEコマースやSNSなどの顧客との接点となるシステムが対象であり、環境変化への追随が可能な俊敏性、柔軟性が重視される。TDSL ソフトウェアシステム技術開発センター ゼネラルマネジャーの今村大輔氏は「これら2つの様式を、目的に応じて使い分けることになる」と語る。

「バイモーダル」に基づくソフトウェア開発の2つの様式 「バイモーダル」に基づくソフトウェア開発の2つの様式(クリックで拡大) 出典:TDSL

 CPSは、工場やビルなどの現場に当たるフィジカル空間と、データやソフトウェアから実現されるサイバー空間が組み合わさった混合的なシステムである。フィジカル空間で得たデータをセンシングしてサイバー空間に送り、認識・理解してから分析・予測によって得た最適化・計画に基づき、フィジカル空間での制御にフィードバックする。「これによってリソースの最適化やマスカスタマイゼーションなどが可能になる」(今村氏)という。

 CPSの中でもフィジカル空間を管理するシステムはQCD(品質、コスト、納期)が重視される傾向にある。一方で、サイバー空間では仮説と検証を繰り返す必要があるため、俊敏さと継続的な進化が求められる。つまり、QCDの重視と関わりが深いモード1、俊敏さと継続的な進化が可能なモード2を適切に使い分けてソフトウェア開発を行う必要が出てくる。

CPSのソフトウェアは、その特性からモード1とモード2を適切に使い分けて開発する必要がある CPSのソフトウェアは、その特性からモード1とモード2を適切に使い分けて開発する必要がある(クリックで拡大) 出典:TDSL
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