ソフトウェア開発におけるAI適用の取り組みは、モード1のウオーターフォールモデルで必要な要件定義プロセスが対象になっている。TDSL ソフトウェアシステム技術開発センター システムエンジニアリング開発部 ステム開発標準担当 スペシャリストの北川貴之氏は「近年、ソフトウェア開発へのAI適用が注目を集めているが、その多くが開発とテストのプロセスを対象としている。その一方で、モード1の要件定義プロセスへのAI適用についてはまだ取り組みが少ない。だからこそ、自社で取り組む意義がある」と語る。
要件定義プロセスでは、顧客である発注者からのRFP(提案依頼書)を入力として「要求獲得」を行い、ソフトウェアに必要な機能や非機能(性能、可用性など)を明らかにする「要求分析」を実施した後、「要求仕様化」によって要件定義書として出力することになる。これらのうち、顧客が顧客自身の業務目線で実現したいことを記載しているRFPからさまざまな要件を分類する作業は人間が行っているため、時間がかかるとともに、読み落としによる漏れ抜けも起こり得るという課題があった。
そこでこの要件分類を自動化するため、深層学習(ディープラーニング)に着目した先行研究を行った。そこで、Webサイトから収集した官公庁のRFPを手作業でラベル付けして教師データとし、自然言語処理技術の一つである「Word2VEC」を用いて分類モデルを作成した。なお、収集したRFPは71ファイル、文章数は2万9068である。
分類モデルの正解率は、予測確率上位1位の種別が合致している場合で62%、予測確率上位1〜3位の種別が合致している場合で86%となった。「自動化という観点では正解率は十分とはいえないが、人手による要件分類作業の漏れ抜けを防止するレビューを補完する効果は期待できそうだ」(北川氏)という。なお、今後半年〜1年をかけて社内でのPoC(概念実証)を進めていくとしている。
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