会見では、Dialogの買収によって、IoT・インフラ事業とオートモーティブ事業のそれぞれでどのような効果が生まれるかについての説明があった。
まず、IoT・インフラ事業で期待されているのは、低消費電力を特徴とするPMICやミックスドシグナルICによるサステナビリティへの貢献である。データセンターや5G基地局など注力分野の事業展開の強化につなげられる。また、「Dialogのコネクティビティ技術はまさにコンピテンシー」(チッティペディ氏)であり、IoTや産業の分野ではWi-FiやBluetooth関連製品を大いに役立てられるとした。
IoT・インフラ事業が注力しているウィニングコンボの展開でも、Dialogの果たす役割は大きい。買収完了と同時に「ルネサス+Dialog」によって新たに提供できるウィニングコンボを30種類発表したほどだ。例えば、2021年7月に発表したIoTシステムの試作を容易化する開発プラットフォームの「クイックコネクトIoT」では、Dialogの低消費電力のBluetooth Low Energy(BLE)とWi-FiのICを搭載する新たなモジュールを投入した。この他にも、USB PDおよびワイヤレス給電対応の100Wアダプターや、超薄型クレジットカードサイズのスマート・トラッキング・ラベルなどがある。
ウィニングコンボのラインアップは、2019年のIDT買収完了後の立ち上げ時には35種類だったが、その後加速度的に拡充が進んでおり、Dialogの買収もあって2021年内に270種類まで増える計画だ。ウィニングコンボによって獲得した販売機会は2021年末までに60億米ドルまで拡大し、このうちデザインインの段階まで進んでいるのが18億米ドルに達するという。チッティペディ氏は「Dialogの買収により、今後1年〜1年半でウィニングコンボをさらに高い次元に押し上げる」と強調する。
またクロスセルについても、ルネサスのMPU「RZシリーズ」とDialogのNOR型フラッシュメモリ、DialogのCMICを活用した部品点数削減ソリューション「GreenPAK」とルネサスのマイコンといった組み合わせが考えられるという。
オートモーティブ事業では、低消費電力のPMICとの連携が中核になる。今回のDialogの買収で9種類のウィニングコンボを発表したが、その多くにPMICが絡んでいる。ルネサス 執行役員兼オートモーティブソリューション事業本部長の片岡健氏は「買収以前からDialogとは協業していたが、さらなる拡充が期待できる」と語る。
この他、BLEも活用できそうだ。タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)や、ルネサスが提供するバッテリーマネジメントシステムをワイヤレス化するのに最適だ。ルネサスのSoC「R-Car」が広く採用されているIVI(車載情報機器)では、DialogのハプティクスドライバーやLEDドライバーとの組み合わせで新たな可能性を生み出せる。
クロスセルでは、IVI向けで高シェアのR-Carに最適な特性を持つPMICの提供や、IoT・インフラ事業でも挙げたGreenPAKに大きな可能性があるという。
片岡氏は「Dialogの研究開発体制はグローバル連携という観点で進んでいる。ルネサスの日本の開発拠点でも、そのやり方を取り込んでいきたい」と述べている。
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