ルネサス エレクトロニクスは2018年9月11日、東京都内で記者会見を開き、米国の中堅半導体メーカーであるIntegrated Device Technology(以下、IDT)を買収する最終契約を締結したと発表した。買収額は67億ドル(約7330億円)で2019年上期中の買収完了を予定している。新株発行を伴う資金調達は行わず、手元資金と主要取引銀行からの借り入れでまかなった。
ルネサス エレクトロニクスは2018年9月11日、東京都内で記者会見を開き、米国の中堅半導体メーカーであるIntegrated Device Technology(以下、IDT)を買収する最終契約を締結したと発表した。買収額は67億ドル(約7330億円)で2019年上期中の買収完了を予定している。新株発行を伴う資金調達は行わず、手元資金と主要取引銀行からの借り入れでまかなった。
IDTの買収によって、成長率の高いデータセンター関連での事業拡大を図るとともに、自動車や産業向けでのポジション強化につなげる。IDTが持つアナログ・ミックスドシグナル製品と、ルネサスのマイコンやSoC(System on Chip)を組み合わせることにより、さまざまな用途に向けてシステムレベルでのソリューションを提供していく。会見に登壇したルネサス エレクトロニクス 代表取締役社長の呉 文精氏はIDTの製品や技術について、ルネサスや、2017年2月に買収したIntersil(インターシル)と重ならず、補完的であることを強調した。
買収により、営業利益ベースで長期的に2億5000万ドル(約275億円)のシナジー効果を創出するとしている。また、買収後2年をめどに8000万ドル(約88億円)のコスト効率化を見込む。これにより、買収後の財務状況の悪化は一時的なものにとどまる想定だ。
IDTは、タイミングデバイスや、ルネサス エレクトロニクスが手薄だったRFやオプティカルインターコネクト、無線給電用デバイスなどパワーマネジメント製品、センサーのフロントエンドのミックスドシグナルといった製品を展開する。データセンターや通信インフラなどビッグデータを扱う分野で特に強みがある。無線給電用デバイスは「iPhone」向けで高いシェアを持つ。過去4〜5年にわたって年率15%で成長し、売上高を2倍に伸ばしてきた。
IDTは2015年にドイツの車載半導体メーカーZentrum Mikroelektronik Dresden(ZMDI)を買収し、車載向けを強化しようと取り組んできた。「IDTは車載を伸ばせていなかったが、いい製品は持っていて、まさにこれからという段階だった。ルネサスのサポートや販売チャネル、顧客基盤を活用すれば、IDTの自動車向けでの成長を加速できる」(ルネサス 取締役執行役員常務 兼 CFOの柴田 英利氏)と見込む。IDTが従来持っていた製品での車載市場での成長や、ルネサス エレクトロニクスの製品との組み合わせによるシナジー効果の創出を積み重ねることで「決して高い買収額にはならない」(柴田氏)という見込みだ
自動車向けでの買収のシナジー創出について呉氏は「自動車とコネクティビティに関しては、クアルコムもいるのでそう簡単ではなく、RFはすぐには自動車向けのビジネスにはつながりにくいかもしれない。だが、フロントエンドのミックスドシグナルはZMDIが強みを持っているところだ。IDTはLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)のミックスドシグナルもある。また、ワイヤレス充電は、携帯電話をコンソールにおいて充電するような機能で需要を見込める」とコメントした。
今後のM&Aについて柴田氏は、製品や技術のラインアップからコネクティビティの強化が必要だという方針を示し、「RFは手に入ったが、まだコネクティビティは欲しい。買収の大小は分からないし、M&Aにはタイミングがあるが、継続的に検討していきたい」と述べた。
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