ルネサス エレクトロニクスが事業展開の進捗状況を説明。「この2〜3月から新型コロナウイルス感染症の感染拡大で事業環境も大きく変わったが、当社としては順調にデザインインが得られている」(同社 社長兼CEOの柴田英利氏)という。
ルネサス エレクトロニクスは2020年8月6日、オンラインで会見を開き、事業展開の進捗状況を説明した。「この2〜3月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で事業環境は大きく変わったが、当社としては順調にデザインイン(顧客の設計段階における受注獲得)が得られている」(同社 社長兼CEOの柴田英利氏)という。
ルネサスの2020年上期(1〜6月)の連結業績は売上高が前年同期比0.7%増の3454億円、営業利益が同296億円増の639億円で増収増益となっている。また、同社が事業進捗で重視しているデザインインについては、上期の時点で、車載半導体を扱うオートモーティブソリューション事業が年間目標の4000億円強に対して約8割、産業機器向けや汎用ICを手掛けるIoT・インフラ事業が同6000億円強に対して約5割と順調に受注を積み重ねている。
オートモーティブソリューション事業では、ADAS(先進運転支援システム)/AD(自動運転)の前方カメラ向けで、SoCやマイコンなどを合わせて10億米ドル以上のデザインインを獲得した。また、中国の長城汽車(Great Wall Motor)とインドの大手自動車メーカーから、EV(電気自動車)やHV(ハイブリッド車)向けのインバーターソリューションを受注したという。このインバーターソリューションは、ルネサスと同社が買収したIDTのデジタル/アナログICを組み合わせて開発した“ウイニングコンボ”の1つだ。柴田氏は「顧客のデザインの手間を減らすものであり、今回のインバーターソリューションはEVやHVを早期投入したい自動車メーカーのニーズに合致した」と説明する。
他にも車載向けウイニングコンボとしてセンサーシングナルコンディショナーや車室内向けのワイヤレスチャージャーを用意している。また、ADAS/ADに必須のレーダーやLiDAR(ライダー、Light Detection and Ranging)についても他社との協業を進めているという。
IoT・インフラ事業では、組み込みAI(人工知能)製品「RZファミリ」の採用が拡大していることを強調した。ルネサスは、RZファミリについて、従来のマイコンやMPUを用いた組み込みAIによる推論モデルの処理性能と比べて10倍、100倍、1000倍の性能を持つラインアップを広げていく方針を示していた。
これらのうち10倍バージョンの「RZ/Aシリーズ」は数々のデザインインを重ねており、2020年6月に発表したばかりの100倍バージョンの「RZ/Vシリーズ」もデザインインを獲得した。「RZ/Vシリーズを採用したカシオの監視カメラソリューションでは、当社がデザインパートナーとして一緒に拡販していくことになった。デバイス開発だけでなく、顧客との関係性でも新しい取り組みが実を結びつつある」(柴田氏)という。
COVID-19の関連で拡大している“非接触”の需要に対応するためVUI(Voice User Interface)のソリューション開発にも注力している。16ビットマイコンを使った単純機能のものから、自然言語認識が可能な高機能のものまでレファレンスデザインを提供していく方針だ。
インフラ向けでは、5G関連の2020年上期売上高が前年同期比80%増、データセンター関連が同20%増などとなっており好調だ。そして、ルネサス初のArmマイコンとなる「RAファミリ」については、市場投入当初の2019年下期に対して2020年上期のデザインインは8倍と大きく伸ばしている。
ルネサスのマイコンのシェア(車載除く)は、16ビットが2019年時点で28.9%と好調なものの、32ビットは2013年の15%弱から2019年は7.3%となるなど漸減していた。今回のRAファミリの投入によって、32ビットマイコンのシェア低下を押しとどめ、今後の反転攻勢に打って出ていく考えだ。
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