ルネサス エレクトロニクスが第5世代の車載用SoC「R-Carシリーズ」(第5世代R-Car)の第1弾製品となる「R-Car X5H」について説明。ADAS、IVI、ゲートウェイなど複数ドメインにわたる制御を1チップで可能にするクロスドメインへの対応や高い処理性能、3nmプロセス採用による消費電力の低減などを特徴とし、第5世代R-Carのフラグシップとなる。
ルネサス エレクトロニクスは2024年11月14日、東京都内で会見を開き、第5世代の車載用SoC「R-Carシリーズ」(第5世代R-Car)の第1弾製品となる「R-Car X5H」について説明した。ADAS(先進運転支援システム)、IVI(車載インフォテインメント)、ゲートウェイなど複数ドメインにわたる制御を1チップで可能にするクロスドメインへの対応を特徴とするとともに、1000kDMIPS以上の高いアプリケーション処理性能、400TOPSのAI(人工知能)処理性能、4TFLOPSのグラフィックス処理性能を備え、3nmプロセスの採用で消費電力も低減するなど第5世代R-Carのフラグシップに位置付けられる。2025年上期に一部の自動車業界の顧客向けにサンプル出荷を開始し、2027年下期から量産を開始する予定だ。
同社 ハイパフォーマンスコンピューティング マーケティング統括部 統括部長の布施武司氏は「ADAS向け半導体市場の2023年〜2030年の年平均成長率の予測が13%であるのに対し、当社は同市場で年平均34%の成長を目指している。第5世代R-Carはそのための戦略製品だ」と語る。
ルネサスはこれまで、制御系システム向けに車載マイコンとして知られる「RH850」、IVIやADAS向けにR-Carシリーズを展開してきた。現行の量産品ベースでは、RH850は「U2xシリーズ」、R-Carシリーズは「第4世代R-Car」を提供している。しかし、次の世代からはマイコンからSoCまで全てのプロセッサコアをArmに統一するなどして、制御系システム向けとIVIやADAS向けなどのロードマップを統合して第5世代R-Carとして展開していく方針である。
この第5世代R-Carの第1弾製品となるのがR-Car X5Hだ。X5HのXはクロスドメイン、5は第5世代、Hはハイエンドを意味している。特徴としては「スケーラビリティ」「フレキシビリティ」「電力効率」「ミクスド・クリティカリティ」の4つが挙げられている。
スケーラビリティでは、今後の自動車開発で重視されるSDV(ソフトウェアディファインドビークル)で採用が進む集中型アーキテクチャへの移行を容易にするための機能をそろえた。アプリケーションプロセッサではArmの「Cortex-A720AE」を32コア搭載しており、1000kDMIPS以上の処理性能を実現した。制御系に求められるリアルタイム処理では、Armの「Cortex-R52」を6コア用いて、自動車向け機能安全規格で最高レベルの要求となるASIL-Dへの対応に必要なロックステップ動作を、60kDMIPS以上の処理性能を可能にしている。メモリは最新のLPDDRX5をサポートする。
近年はADASなどで利用が始まっているAIへの対応では、AIアクセラレータであるNPUを搭載し400TOPS(スパース化を行った場合)のAI処理性能も備える。もともとR-Carシリーズが広く採用されていたIVIは多画面化や高精細化が進んでいるが、4TFLOPSのGPUを集積することで8K画像や10以上の画面の一括処理にも対応した。今後も進化が続く自動運転システム(AD)やADASは、より多くのカメラが必要になるがそのためのカメラインタフェースも豊富にそろえている。
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