コネクテッドカーや自動運転、電動化など自動車の進化と密接に関わる半導体。半導体サプライヤー各社は戦略を派手に打ち出し、自動車事業の拡大を狙う。その中でルネサス エレクトロニクスはどのように戦うのか、同社 オートモーティブソリューション事業本部 副事業本部長の片岡健氏に車載事業の戦略を聞いた。
コネクテッドカーや自動運転、電動化など自動車の進化と密接に関わる半導体。自動車メーカーと半導体サプライヤーが直接組んで、新技術の開発を進めることも珍しくない。また、画像認識技術を得意とする会社がモビリティサービスに乗り出し、通信に強い会社はコックピットや自動運転用プラットフォームにもラインアップを広げるなど、各社とも戦略を派手に打ち出し、自動車事業の拡大を狙う。
その中でルネサス エレクトロニクスはどのように戦うのか、同社 オートモーティブソリューション事業本部 副事業本部長の片岡健氏に車載事業の戦略を聞いた。
MONOist 半導体サプライヤーの中で、立ち位置をどのように見ていますか。
片岡氏 水平分業と垂直統合に分けられます。自動車メーカーとティア1サプライヤー、ルネサスは垂直統合型に該当します。一方、モービルアイ(Mobileye)やNVIDIA、クアルコム(Qualcomm)などは、得意な領域をプラットフォームとして一体で提供する水平分業型のビジネスだと考えています。
例えば、われわれも他の半導体サプライヤーもソフトウェアを提供しますが、他社はアプリケーションに関わるソフトウェアまで手掛ける方針のようです。われわれが提供するのはデバイスのドライバであり、自動車メーカーやサプライヤーが開発するアプリケーションには手を出しません。また、半導体サプライヤー各社で競合するようにみえるかもしれませんが、狙っている領域は必ずしも同じではありません。
自動車メーカーや大手のサプライヤーは、水平分業よりも垂直統合を好みます。PCの世界では、水平分業によって製品の根幹となるCPUやOSを少数の会社が握った結果、PCメーカーとしてビジネスを展開する企業はいなくなりました。自動車メーカーは、これと同じ構図を避けようとしています。
水平分業型の企業は、ハードウェアではなくそこから生まれるサービスを価値にしようとしています。自動運転などクルマの進化によって、クルマが提供できる価値は変わっていきますが、垂直統合型だからサービスでのビジネスをやらない、できないというわけではありません。われわれは、水平分業型のプラットフォーマーの一部になるのではなく、自動車メーカーの垂直統合型のエコシステムの中でやっていく方針です。
MONOist 直近ではADAS(先進運転支援システム)で10億米ドル以上の受注を獲得する一方で、中国やインドの自動車メーカー向けの納入も決まっています。タイプの違う自動車メーカーにどのような戦略で対応していますか。
片岡氏 自動車メーカーのニーズには濃淡があります。複数の車両に展開できるプラットフォームを自社開発したい場合もあれば、そのまますぐに使えるものが必要とされるケースもあります。この双方に対応することを戦略としています。積極的に自社で開発する自動車メーカーに提供するのはスケーラビリティです。ルネサスのどのクラスのマイコンやSoC(System on Chip)を使っても同じように動くことが重要です。
一方、大きなプラットフォームはまだ作らない、または開発できないという新興自動車メーカーからは、動くものや使えるものをそのまま持ってきてほしいという要望もあります。そういったニーズには、アナログICとSoC、場合によってはソフトウェアも含めた「ウイニングコンボ」で対応していきます。大手の自動車メーカーやサプライヤーでも、これから規格や普及の変化が読みにくいものや、既に汎用化された技術を取り入れる場面でウイニングコンボを提案しています。買収したIntegrated Device Technology(IDT)とルネサスのシナジーを創出するため、従来よりもセットでの提案に注力しています。
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