ファーウェイが進めるスマート工場化、外観検査をAIで行い労働負荷を6割削減 : スマートファクトリー (2/2 ページ)
検査の内容を具体的に紹介すると、基板外観検査では8Kカメラ画像を使い、ネジとロッドが正しい位置に全て実装されているかを検査する。AIモデルはSSD-MobileNet V1を使用している。基板外観検査では同時にネジやロッドなどの部品落下も検査している。
ラベル、ロゴ検査では、5枚のラベルが所定の場所に張っているか(ラベルの数、サイズ、位置)をチェックする。また、仕向け地ごとに正しいラベル(ラベル内の特定文字を認識)を張ってあるかを検査する。4K画像およびAIモデルは、物体検知+OCR(Optical Character Recognition)技術を用い、1枚当たり30msのスピードで行う。
同梱物が全てそろっているかを検査する梱包検査は4Kのカメラ画像と物体検知にSSD-VGG16を採用している。この検査システムは、繊維産業向けで布地プリントの染色検査システムとして、顧客にソリューション提供も行っている。繊維産業のある企業では、ソリューション導入により検査効率が50倍に向上し、人的コストも60%削減した成功例などもあるという。
組み立て検査では、組み立て部品の有無、部品の誤り、実装の向きや角度をチェックする。文字検査ではラベルの文字の確認、背景が変わっても正しく認識できるようにしている。また、塗布/グリス検査では画像から対象物の正確な領域を抽出し、大きさや面積を測定し、正しく塗布が行われているか確認する。キズ/異常検知は、不良サンプルがほとんどない場合に、良品サンプルだけでの学習を行い、不良を見つけ出すことができる。
スマートファクトリーとしてAIモデルを使った結果をまとめると、製造検査の精度は誤検知率1%以下、精度99%以上を記録するなど、大きく向上させることに成功した。さらに検査員の労働負荷も60%削減を実現している。ファーウェイでは、これらの自社工場でも活用するAIをシナリオに合わせて提供しており「よく使うシナリオを1つにまとめてSDKとして顧客にも外部販売している」と秋元氏は述べている。
外観検査システムの概要(クリックで拡大)出典:ファーウェイ・ジャパン
ファーウェイの工場では、製造向けサービスを起点としたE2Eプラットフォームの開発と導入を推進中だ。同プラットフォームは「製造DX学習系プラットフォーム」「製造DX推論系プラットフォーム」「製造向けサービス」の大きく3つに分かれている。例えば、製造DX学習系プラットフォームではカメラで撮った画像を画像データストレージに格納し、分散ストレージを使用することで単一障害点がないという特徴を持つ。この画像を使って開発用コンテナでそれぞれのモデルを開発する。そして検証した結果、ある程度使えるようなレベルになれば、推論クラウドを通してエッジサーバ上で稼働するアルゴリズムコンテナに実装する仕組みを構築する。
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