中国スマート工場最前線、“世界最高のモノづくり”に向け中国は何を考えるかIIFES2019

オートメーションと計測の先端総合技術展「IIFES2019」の特別セッションに、中国科技自動化アライアンス スマートファクトリー研究所 所長で事務局長の王健氏が登壇。「中国のスマート製造におけるAI/ビッグデータ/IIoTのメガトレンドとアプリケーション」をテーマに、中国の製造業の現状や直面する課題、昨今のスマート製造、さらには産業用インターネットにおける政府の政策、開発状況などを紹介した。

» 2020年02月06日 11時00分 公開
[長町基MONOist]

 オートメーションと計測の先端総合技術展「IIFES2019」(2019年11月27〜29日、東京ビッグサイト)の特別セッションに、中国科技自動化アライアンス スマートファクトリー研究所 所長で事務局長の王健(Jason Wang)氏が登壇。「中国のスマート製造におけるAI/ビッグデータ/IIoTのメガトレンドとアプリケーション」をテーマに、中国の製造業の現状や直面する課題、昨今のスマート製造、さらには産業用インターネットにおける政府の政策、開発状況などを紹介した。

中国製造業でもモノづくりの中心は「人」

 中国科技自動化アライアンス スマートファクトリー研究所は、2011年に設立された。一般的な製造工程の自動化や改善だけでなく、高度なインテリジェントマニュファクチャリングや研究開発に使われる技術などの研究開発に取り組んでいる。2012年には「China Smart Factory 1.0」を構築した。このアーキテクチャでは、改革への方法論などを定義した。さらに、2014年には「Smart Factory Open Platform」を発表した。これは、イノベーションのためのエコシステムで、スマートファクトリーの研究に関して、ロボティクスコンポーネント、MES(製造実行システム)、産業用ビッグデータ、次世代繊維など10以上のWG(ワーキンググループ)を設置し具体的な技術開発を進めている。さらに、2016年には「10 Enterprise Innovation Centers(企業革新センター)」を設立し、取り組みの幅を広げている。

photo 中国科技自動化アライアンス スマートファクトリー研究所 所長で事務局長の王健氏

 中国の製造業にもさまざまな種類があるが、共通している課題が、品質、コスト、効率性である。「どの国の製造業でも同じだと思うが、製造業をより長く持続可能なものにするためには、品質や生産性は欠かせない項目だ。重要課題として位置付けてこれらを改善するための取り組みを進めている」と王氏は語る。また技術だけでなく人材についても重要視しており、王氏は「スマートマニュファクチャリング(智能製造)により自動化領域はさらに広がるが、あくまでもエコシステムの中核となるのは人だ」と考えを述べている。

 また「スマート工場化を進めるのに、中国の製造業には大きなチャンスがある」と王氏は強調する。世界で最も完成した製造システムがあり、生産量に伴った高度なサプライチェーンや効果的な物流システムを整備していることなど、世界最大級のモノづくりインフラが整っているということだ。さらに最大規模の市場、高度な生活インフラ、労働力、そして安定した政治、経済の環境があることについても「強みとなる」(王氏)としている。

IT企業がけん引するのか、製造業がけん引するのか

 中国オートメーション産業の市場規模は200億ドルで、成長率は年間10%で推移している。米中貿易摩擦の影響などもあり直近は停滞感があるものの、今後については地政学的問題が解決すれば、さらに成長することが期待されている状況だ。現市場では、モーションコントロール、VFD(高圧インバーター)、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)などの製品が好調に推移している。これら製品の市場占有状況を見ると、中国ローカルメーカーは低中級市場で高いシェアを持つ。一方で、ドイツのシーメンス、フランスのシュナイダーエレクトリック、スイスのABBなどがハイエンド市場で高いシェアを持つ。

 ロボット関連市場では中国がここ数年で世界最大の市場となり、2018年には15万5000台が販売された。これは世界の総販売数(42万2000台)の約3割を占める数だという。こちらのメーカー別の販売ランキングではファナック、ABB、KUKA、安川電機などが上位を占めており、日本企業が上位にランクインしている。ただロボットに関しては、中国メーカーの成長も著しく、追い上げを受けている状況だといえる。ロボットが数多く導入されているのは、自動車、コンピュータ、通信、家電などの製造業だ。また、包装、薬品メーカーなども今後伸びると見られている。将来的には協働ロボットや物流などの分野へも拡大する見込みだ。「中国企業ではAubo、Geek+(ギークプラス)などがリーダー格となっており、今後はインテリジェントロボットが主力となるだろう」と王氏は語っている。

 これらのコンポーネント以上に最近ではスマートマニュファクチャリングとインダストリー4.0が重要なカギとされており、製造現場でもICTの影響力が高まっているという。「IIoT(産業用IoT)、クラウド、ビッグデータ、デジタルツイン、AI、5Gが重要なトピックだと位置付けられており、製造現場においても関心の高いキーワードとして注目されている」(王氏)。

 一方、中国にはこの分野で世界的なリーダー企業を抱えている点も特徴だ。ファーウェイ、バイドゥ、テンセント、アリババなどだ。これらの企業は新興企業であり「今後さらに各企業の持つ専門技術をモノづくりに生かすことが重要になる」と王氏は述べる。

 ただ「中国内でもこうした新興企業中心でスマートマニュファクチャリングを推進するべきか、製造業だけで進めていくべきなのか、大きな議論がある」と王氏は語る。インターネット企業が主導するのか、産業が主導していくのかというものだ。この結論は出ていないが、政府では技術先進計画を作成し、製品開発、標準化、大規模実装などの面で5Gと産業用IoTを組み合わせて製造業に利益を生むことを計画しているという。

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