日立がロボットSI事業強化に向けさらなる一手、Kyoto Roboticsを買収 : 産業用ロボット (2/2 ページ)
日立がKyoto Roboticsの買収で大きく期待しているのは、市場が急激に拡大するロジスティクス分野での事業展開の加速だ。日立 産業・流通ビジネスユニット ソリューション&サービス事業部 ロジスティクス事業推進本部長の神田充啓氏は「労働力不足にコロナ禍も加わり、ロジスティクス・FA分野のロボットソリューションによる自動化や省力化のニーズは高まっている。特にロジスティクス分野のロボット市場は、2017〜2025年で年平均18%の成長率が見込まれており、Kyoto Roboticsの高い技術力と開発力は大いに期待できる」と説明する。
FA・ロジスティクス分野におけるロボット市場の成長(クリックで拡大) 出典:日立
実際にKyoto Roboticsはロジスティクス分野において、FA分野で多数の実績を持つTVSを基にした高い3次元認識率を強みとしており、単載デパレタイズであれば99.9%の精度を誇る。この高い認識率を事前の情報登録が不要なマスターレスで行うとともに、AIを活用したロボット制御システムと組み合わせて、単載デパレタイズで1時間当たり850ケース、混載デパレタイズで1時間当たり600ケースという業界最高水準の処理性能を実現している。
Kyoto Roboticsのロジスティクス分野における強み(クリックで拡大) 出典:日立
これらKyoto Roboticsのコアテクノロジーに、日立が展開するAGV(自動搬送車)の「Racrew(ラックル)」を組み合わせるなどして物流センターの高度化を進めていく。単なるロボットによる省人化、無人化にとどまらず、日立が推進する4M(huMan、Machine、Material、Method)データの収集との連携や、WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫実行システム)など計画系システムとの連携も視野に入れており、日立のデジタルソリューション群である「Lumada」の事業にもつながることになる。また、FA分野についてもKyoto RoboticsのTVSが既に高い納入実績を有しており「今後も着実な成長を目指していける」(神田氏)としている。
日立の考える物流センター高度化の取り組みとKyoto Roboticsの関わり。まずは、日立のAGV「Racrew」との組み合わせで省人化、無人化を進め、4Mデータの収集や、WMS、WESとの連携などを図っていく(クリックで拡大) 出典:日立
なお、森田氏は2021年4月1日付で産業・流通ビジネスユニットのCEOに就任してから初めての会見となった。同氏は「日立の産業・流通ビジネスユニットは、サイバーフィジカルシステムに必要なプロダクト、OT、ITにわたって全ての技術を有しているユニークな事業体だ。Kyoto Roboticsのように必要があればフィジカルの領域も強化しつつ、事業を国内外で拡大していきたい」と意気込みを述べている。
サイバーフィジカルシステムのサイバーとフィジカルをつなぐ日立の取り組み(クリックで拡大) 出典:日立
⇒その他の「産業用ロボット」の記事はこちら
日立がロボットSI事業で目指す、次世代サプライチェーンの実現
日立製作所は2020年11月4〜6日、オンラインでプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE」を開催。そのエキスパートセッション「ロボティクスとデジタルでめざす次世代サプライチェーンマネジメント」の内容について紹介する。
現場と経営のデータ循環を迅速に、Afterコロナで活躍する日立のデジタルツイン
日立製作所は2020年11月4〜6日、オンラインでプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE」を開催した。同イベントのエキスパートセッションでは、日立製作所 インダストリー事業統括本部 CSOを務める森田和信氏が、Afterコロナの製造業の課題や、それを解決し得る製造業向けのDXソリューション「トータルシームレスソリューション」などを紹介した。
日立がロボット事業に参入する理由は「高度なシステム化力」
日立製作所は、東京都内で開催したプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」において、同社が注力しているロボティクス技術についての展示を行った。
ロボットSIに注力する日立、ラインビルダーとしての実力もアピール
日立製作所は、「IIFES2019」において、ロボティクスソリューションの実機デモを披露した。前工程と後工程2つのセルから成る生産ラインであり、ラインビルダーとしての実力もアピールする内容になっている。
日立がロボットSIを買収し北米ラインビルダー事業に参入、その2つの理由
日立製作所は2019年4月24日、米国のロボットシステムインテグレーター(ロボットSI)であるJR Automation Technologies(JRオートメーション)を買収し、北米において生産ライン構築を請け負うラインビルダー事業に参入することを発表した。買収金額は約1582億円となる。
日立産機システムがロボットSIerを買収、ロボティクス事業を強化
日立産機システムは、東京海上キャピタルが保有するケーイーシーの全株式を買収する契約を締結した。日立グループの制御技術やITにケーイーシーのロボットSI技術やノウハウを融合し、ロボティクス事業における競争力の向上を図る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.