日立製作所とロボットベンチャーのKyoto Roboticsは、2021年4月1日付で日立がKyoto Roboticsの全発行済株式総数の約96%を取得し、子会社化したことを発表した。
日立製作所(以下、日立)とロボットベンチャーのKyoto Roboticsは2021年4月8日、オンラインで会見を開き、同年4月1日付で日立がKyoto Roboticsの全発行済株式総数の約96%を取得し、子会社化したことを発表した。買収金額は非公開。日立は、ロジスティクス・FA分野で3次元ビジョンセンサーやAI(人工知能)を活用した制御システムで強みを持つKyoto Roboticsの買収により、強化を進めるロボットSI事業のさらなる高付加価値化につなげたい考えだ。
立命館大学発ベンチャーの第1号として2000年に創業したKyoto Roboticsは、2011年に世界初の産業用ロボットに取り付け可能な3次元ロボットビジョンセンサー「TVS」を開発し、200社以上に採用されるなどFA分野で高い実績を持つ。2017年からはロジスティクス分野に進出し、TVSで実績のある3次元ビジョンセンサーに加えて、AIを活用した制御システムによる荷積みや荷降ろしの自動化にも取り組み、実績を積み重ねている。現在の資本金は9980万円で、従業員数は約40人だ。
一方、日立は重点投資分野の一つであるインダストリーセクターにおいて、製造・ ロジスティクス分野で高まっているロボットを活用した現場の自動化や膨大なデータ収集に対応すべくロボットSI事業を強化している。2019年には、米国のJRオートメーションや日本のケーイーシーといったロボットSIerを買収している(ケーイーシーは日立産機システムが買収)。
今回のKyoto Roboticsの買収は、日立のロボットSI事業における、プロダクトとOT(制御技術)、ITから成るトータルシームレスソリューションの中で、高度な知能ロボットシステムの技術とノウハウというプロダクト側で不足していたピースを埋めるものとなる。日立 執行役常務 産業・流通ビジネスユニット CEOの森田和信氏は「ここまでロボットSI事業を強化してきたが、Kyoto Roboticsの技術とノウハウは日立にとって新たな武器になる」と語る。
Kyoto Robotics 社長の徐剛氏も「3次元ビジョンセンサーなどで世界の最先端を走ってきた自負があるが、これらの技術はロボットSIに組み込んでもらって初めて現場で力を発揮する。そのロボットSIに注力している日立と一緒になることで、さらなる成長が可能になる」と期待を込める。
なお、今回の日立によるKyoto Roboticsの買収では、2016年にKyoto Roboticsに4億円を出資した官民ファンドのINCJも所有株式の譲渡という形で関わっている。INCJ 執行役員の芦田耕一氏は「スタートアップやベンチャーの成功は株式上場(IPO)というイメージが強いが、今回のように大企業による買収という形もあっていいのではないか」と述べる。
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