日立製作所は2020年11月4〜6日、オンラインでプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE」を開催した。同イベントのエキスパートセッションでは、日立製作所 インダストリー事業統括本部 CSOを務める森田和信氏が、Afterコロナの製造業の課題や、それを解決し得る製造業向けのDXソリューション「トータルシームレスソリューション」などを紹介した。
日立製作所(日立)は2020年11月4〜6日、オンラインでプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE」を開催した。同イベントのエキスパートセッションでは、日立製作所 インダストリー事業統括本部 CSO(最高戦略責任者)を務める森田和信氏が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大以降の製造業の課題を総括した上で、製造業向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)「トータルシームレスソリューション」などを紹介した。
森田氏はセッション冒頭で、COVID-19によって製造業にもたらされたさまざまな変化と、新たに発生した課題点を説明した。
特に大きな変化として取り上げたのが、サプライチェーンの分断化と、工場での生産体制への影響である。COVID-19の感染拡大以前に調達先や生産拠点の集約化を行っていた製造企業では、感染拡大以降、工場が操業停止の事態に陥ってしまい、生産停滞や在庫不足になどの被害が生じたと森田氏は説明する。
「いわゆる『3密』の回避が既存の生産体制では行えず、工場操業を一時停止する製造企業もあった。これによって出荷予定の製品量を適切な数確保できず、在庫不足による機会損失が生じた。COVID-19前後では消費者の需要が急速に変化した。また、市場ニーズも急激に変化したが、既存の企画、設計、生産部門の体制では対応が難しい局面もあった」(森田氏)
こうした変化に対応するために製造業はリスクマネジメントを図る必要があり、調達先や生産拠点の分散化や、急激な市場変化に対する企画、設計、生産工程へのタイムリーな反映を可能にする仕組みづくりが求められると森田氏は指摘する。より具体的には、経営全体を見える化して、迅速かつ正確な経営判断を下すために、サプライチェーンやエンジニアリングチェーンを可視化し、バリューチェーン全体を把握する必要がある。ただし、こうした対策自体は、COVID-19以前から一部の製造業は継続して取り組んできたことでもある。このため森田氏は、「全く新しく出てきたというよりも、COVID-19を境に鮮明化した課題群だといえるだろう」とも補足した。
サプライチェーンの分散化と共にデータを通じた可視化を行い、さらに消費者ニーズを的確に把握して、製品企画や設計などエンジニアリングチェーンの上流までくみ上げるためには、社内外で各種チェーンを把握するための専用の仕組みづくりが必須となる。この実現に向けた日立の取り組みとして、森田氏はトータルシームレスソリューションを紹介する。
トータルシームレスソリューションは、いわゆるデジタルツインの構築を通じてフィジカル空間とサイバー空間でのデータ流通を通じて、経営と現場での相互フィードバックを高速で実現するというものである。製造業の現場から収集したデータを基に、日立が展開するデジタルソリューション「LUMADA(ルマーダ)」などを用いて分析し、経営改善につながる知見を発見し、その成果を現場へとフィードバックする。
具体的には工場ラインに設置した自律ロボットや協調制御システムなどからデータを取得し、サイバー空間にて、生産など各種プロセスのモデル化を通じて、ボトルネック分析や生産計画の最適化、ライン改善やメンテナンス計画の構築を行う。そして、構築した計画を基にフィジカル空間のロボットなどのラインにデータをフィードバックする。また、サイバー空間のデータを設計、企画支援やSCM(サプライチェーンマネジメント)ソリューション構築の層にまで引き上げて、役立てることも可能だ。「将来的には、フィードバックのループを限りなくリアルタイムなものに近づけたい」と森田氏は意欲を見せる。
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