身近にあるモノを題材に、それがどのような仕組みで動き、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。最終回となる今回は、上皿はかりに使われている「平行リンク機構/ロバーバル機構」について取り上げる。
皆さま、こんにちは! プロノハーツの久保田です。連載「身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門」も2019年8月に第1回がスタートしてから、早いもので第9回となりました。これまでさまざまなモノを分解、観察して、その機構について学んできましたが、そんな連載も今回で最終回となります。
最後にお届けするテーマは、上皿はかりに使われている「リンク機構」です。
リンク機構は、扇風機の首振りの仕組みについて取り上げた連載第1回でも紹介しましたが、今回は“はかり”です。実は、いつか取り上げようと思って温めていたネタでもあります。一体、どのようにリンク機構が使われているのでしょうか。それでは、最終回のスタートです!
今回分解した上皿はかりは、100円ショップで購入したもの(図1(左))になりますが、使われている材質や部品形状などに違いはあれど、基本的には業務用(図1(中央))だろうと、キッチン用だろうとその構造は同じです。ちなみに、図1(右)は、筆者の実家にあったキッチン用の上皿はかりです。年季の入った古いものですが、こちらも同じ構造をしていました。
機能としては、上皿部分にモノを置くと目盛りの中心に配置された針が回転し、上皿に置いたモノの重さを量ることができます。
モノの重さで上皿を上下させて針が回転運動する――。これまで本連載をご覧になっている皆さまであれば、どのような機構が使われているのか、ピンとくるのではないでしょうか。ぜひ予想してみてください。
それでは、早速分解していきましょう。目盛りの付いたカバーを取り除き、ネジを2本外すと、簡単にバラすことができました(図2)。
中には取り外しができない部品もありますが、部品点数はあまり多くありませんね。では、実際にどうやって針を回転させているのか、仕組みを見ていきましょう。
まずは、上皿の固定方法です。ここには「平行リンク機構」が使われています。平行リンク機構とは、対向するリンクがそれぞれ等しい“4節リンク機構”です。図3に示した(1)と(4)、(2)と(3)のリンクは常に平行となります。
実際にバラした上皿はかりを見てみると、上皿とリンク(1)が一体化しており、同じ長さのリンク(2)と(3)によって、筐体の裏カバーリンク(4)と接続しています(図4)。
この平行リンク機構ですが、実は上皿はかりにとって非常に重要な役目を果たしています。1つは、お皿が下がっても斜めにならないことです。1本のリンクだけに固定されていたらリンクの傾きにあわせてお皿も傾いてしまいますし、傾かないように変にガイドの溝を付けるのも正確な測定の邪魔になりそうです。
そして、もう1つ重要な役割があるのですが……。それについては、本稿の後半で説明しますので、先に全体的な構造を見ていきましょう。
上皿と一体化しているリンク(1)部分と裏カバーには、常にテンションが掛かった状態の引っ張りバネが付いており、上皿にモノが置かれるとその重さの分だけバネが伸びる仕組みになっています。
最後に、針を回す仕組みです。これには連載第2回でも紹介した「ラック&ピニオン機構」が使われていました(図5)。
平行リンク機構で接続された上皿に測定物を置くと、その重さ分だけバネが伸びて上皿が下がります。ラックは上皿に連動して動くため、同じように下がり、その分“針と連動したピニオンギアが回転”してグラム数を示します。これが上皿はかりの仕組みになります。
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