不思議に思ったことは実際に作って試してみよう! ということで、ロバーバル機構のてんびんを作ってみました。これにコインを置いて試してみたいと思います。
まずは確認のため、“ただの棒”で実験してみました(図9)。当然、同じ位置では釣り合いますが、支点からの位置を変えると、支点から遠い方が下がり、近い方が上がってしまいます。
次に、ロバーバル機構を取り入れた場合はどうでしょうか? まず正常に動くかどうかを確認するため、1円玉(約1g)とコイン(約5g)で確認してみます(図10)。コインの方が重いので、きちんとコイン側(左側)が下がりました。
それでは、同じ重さのコインをそれぞれの位置に置いてみましょう(図11)。
いかがでしょうか。見事に、どの位置に置いても釣り合いましたね。ロバーバルさん疑ってすいませんでした!!
このロバーバル機構の発明によって“上皿てんびん”が生まれ、はかりは画期的な進化を遂げて利便性が向上しました。そして、今回紹介した上皿はかりやロードセル(荷重変換器)を利用した“電子はかり”にも応用されていきます。1つの機構によってそれまでの歴史が塗り替えられ、その後さまざまな進化を遂げていく――。非常にスケールの大きい、すてきな話ですよね。
さて、連載「身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門」の最終回の内容はいかがでしたでしょうか。
今まで皆さんと一緒に、身近なモノに隠れているさまざまな機構を見てきました。機構を学ぶこと、知ることは、ご自身の設計の幅、設計の選択肢を必ずや広げてくれるはずです。少しでも読者の皆さまのお役に立てれば! という思いで連載を続けてきました。まだまだ勉強中の身で、至らない点も多かったかと思います。しかし、本連載を通して、筆者自身も楽しく、さまざまなことを学ばせていただきました。
ご協力いただいた皆さま、読んでいただいた皆さま、本当にありがとうございました。またどこかでお会いしましょう! (連載完)
久保田昌希
1981年長野県生まれ。大学卒業後、大手住宅メーカーの営業職に就くも退職。その後に就いた派遣コーディネーターの仕事で製造ラインの人員管理などを行い製造業に関わりを持つ。その中でもっと直接モノづくりに関わってみたい、自分で製品を生み出してみたいという思いが強くなり、リーマンショックを機に退職。職業訓練で3D CADや製図、旋盤やマシニングセンターの使い方を学んだ後、現在のプロノハーツに入社。比較的早い段階から3Dプリンタを自由に使える環境に身を置けたため、設計をしてはすぐに社内試作を繰り返し、お客さまからもたくさんのご指導を頂きながら、現在では医療機器からVRゴーグルまでさまざまな製品の開発、試作品の製作を受託。その経験を生かし子供たちに向けた3D CADや3Dプリンタの使い方講座なども行っている。
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