身近にあるモノを題材に、それがどんな仕組みで動いていて、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。今回は「ラチェット機構」にフォーカスし、自転車の後輪部にあるラチェット機構の仕組みや役割を詳しく解説する。
皆さま、こんにちは、プロノハーツの久保田です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受け、外出自粛要請が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
何かと家にこもりがちな毎日かと思いますが、こんなときこそ“新しいことを始めるチャンス”ということで、機構設計を学んでみてはいかがでしょうか。この連載を参考に、ご自身でいろいろと分解しながら楽しんで読み進めていただければ幸いです。
連載第5回は「ラチェット機構」を取り上げます!
ラチェット機構とは回転を一方向に制限するもので、ある一方向には回るのですが、反方向には回らない(回せない)機構のことです。
では、どのようなところに使われているのでしょうか? ラチェット機構というと、最初に思い浮かぶのが「ラチェットレンチ」です(図1)。その名の通り、ラチェット機構が備わったレンチになります。
普通のレンチの場合、締め付けるたびにナットからレンチを外して、またナットにはめて締め付けて〜を繰り返す必要があります。これに対して、ラチェットレンチの場合、片側への回転がフリーになるため、一度締め付けてから逆方向にレンチを回してもナットは緩まず、ナットにレンチをはめたまま締め続けることができます。普通のレンチよりも格段に作業効率がアップしますね。
そんなとても便利なラチェット機構ですが、一体どのような構造になっているのでしょうか? 今回は、大きく形状の異なる2つラチェット機構を見てみたいと思います。
こちらのタイプは、バネで押し当てられた爪が歯車の回転を抑えることで一方向への回転を止め、逆に回転すると、今度は歯車が爪を押し上げて回転が続けられるようになります(図2)。細かい形状などは、もの(製品など)によってさまざまですが、先ほど紹介したレンチはこちらのタイプになります。
こちらのタイプは、すり鉢状に溝が切られた2つの部品をバネで押し当て、溝同士がかみ合った形状をしています。図3に示す赤色の部品が固定されている場合、黄色の部品を反時計回りに回転させようとしても溝がかみ合ってしまい回転できません。しかし、時計回りに回転させると、黄色の部品が上に持ち上がり、回すことができます。
どちらのタイプの機構を採用しても同じ結果を得ることができます。スペースや強度、メンテナンス性などを考慮して使い分ける必要があります。また、バネ強さ、爪や溝の角度を調整することで、“ある一定のトルクまでは回転し続けるが、トルクが強くなると空転させる”など、歯車やモーターに余計な負荷が掛からないようにする安全装置として使うことも可能です。
では、もう少し生活に身近なところでラチェット機構を探してみましょう。おそらく、多くの人が持っており、使用頻度もそれなりに高いものだと思いますが……。
そうです! 自転車です。
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