身近にあるモノを題材に、それがどんな仕組みで動いていて、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。今回は、末端のキャップを押し込むとペン先が飛び出し、もう一度押し込むとペン先が引っ込むノック式ボールペンの機構に迫る。
皆さま、こんにちは、プロノハーツの久保田です。
先日、小学生向けの3Dプリンタ講座が長野県・塩尻市主催で開催され、講師として教壇に立たせていただきました。オートデスクの「Fusion 360」を使って「チョロQ」(タカラトミー)のボディをデザインし、3Dプリントしよう! という講座だったのですが、参加してくれた小学生の皆さんは「スピードが出るようにボディを削って軽くしました!」「速さよりもカッコ良さを重視しました!」など、こだわりを持って取り組んでくれ、日本の未来は明るいなと感じました(※そのときの様子は以下のリンクからご覧ください)。
さて、そんな子供たちにも読んでもらいたい連載「身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門」の第4回を始めていきましょう。
今回は、前回予告した通りノック式ボールペンの謎について解説します。ノック式ボールペンとは写真のように、末端のキャップを一度押し込むとペン先が飛び出し、もう一度押し込むとペン先が引っ込む、どこにでもある一般的なボールペンのことです(図1)。
しかし、なぜこの末端のキャップを押し込むという全く同じ動作を行っているのに、ペン先を出してロックする/ロックを解除してペン先を引っ込める、という違う動き方をするのでしょうか?
押し込むとペン先が飛び出し、離すと引っ込むという動きだけであれば、先端にバネが入っていて指の力で押し出し、バネの力で元に戻るという仕組みを思い付くのではないでしょうか。
ですが、問題となるのはロック機構とロック解除の機構です。与える力方向は全く同じで、ロック/ロック解除を交互に繰り返し行うという機構が、この直径10mmの筒の中に仕込まれているはず!
実は、この中には「ノックカム機構」というカム機構が使われています。ノックカム機構とは、一体どういった構造なのでしょうか。早速分解して確認してみましょう。
ボールペンペンの先端に付いているキャップ部分を外してみると、ボールペンの芯とバネが出てきました。予想通りペン先の上下は押しバネの力が使われていました(図2)。
しかし、分解できたのはここまでで、後はしっかりと接着されており、破壊しないと中の部品を取り出すことができません。さすがに、まだ使えるものを壊すのはもったいない……ということで分解はここまでとし、以降は見える範囲と簡易的に作った3Dデータを使って、解説していくことにします。
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