東北大学は、簡易な装置を用いて、脂肪が燃焼する際に発生する呼気中のアセトンガスを精密に測定し、運動後の脂肪燃焼の様子をモニタリングすることに成功した。脂質代謝メカニズムの詳細な解明や糖尿病の無侵襲診断への応用が期待される。
東北大学は2021年1月25日、簡易な装置を用いて呼気中のアセトンガスを精密に測定し、運動後の脂肪燃焼の様子をモニタリングすることに成功したと発表した。同大学大学院医工学研究科 教授の松浦祐司氏らの研究グループによる成果だ。
体脂肪が燃焼、分解される際、脂肪の代謝反応によって血中に生成されたアセトンが、アセトンガスとして呼気中に現れる。研究グループは、アセトンガスが極端に波長の短い真空紫外光に強力に吸収されることに注目し、呼気に真空紫外光を当てて、含まれるアセトンガスの濃度に応じて真空紫外光が弱まる度合いを測定した。
一般的な呼気中のアセトン濃度が1ppmであるのに対し、この測定方法では0.03ppmという高い精度でアセトンガスを検出できた。測定に必要な時間は6秒程度で、ほぼリアルタイムでモニタリングできることになる。なお、測定装置は、真空紫外光を発生する重水素ランプと呼気を閉じ込める細い管状の中空光ファイバー、小型分光器の3つで構成されており、小型で低コストな装置となっている。
同測定装置で運動中と運動後の脂肪燃焼をモニタリングした結果、運動中のアセトン濃度はほぼ一定だった。一方、運動後は徐々に増加しており、脂肪燃焼が主に運動後に生じていることが示された。
また同装置は、アセトンと同様に脂質代謝の指標となるイソプレンの同時測定も可能で、脂質代謝メカニズムの詳細な解明に寄与する。さらには、糖尿病や肥満の無侵襲診断への応用が期待される。
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