市場合理化生産を進めるダイキン工業、国内工場の「求心力」生かした自動化推進スマート工場EXPO(2/2 ページ)

» 2021年02月09日 11時00分 公開
[長町基MONOist]
前のページへ 1|2       

日本工場への「求心力」と海外工場の「遠心力」

 ダイキン工業における日本と海外の工場の関係を見ると、日本の工場には海外の工場をコントロールする「求心力」が求められている。それに対して、海外の工場が徐々に拡大していくと、独自の取り組みを行う「遠心力」が強くなってくる。「遠心力」が強くなりすぎると、分散化が進み効率性が落ちることも生まれてくる。そこで、同社では日本の工場における「求心力」を高めることに力を注いでいるという。

 こうした取り組みの1つが先述したベースモデル作りである。また、的確なモノづくりの標準化を行うなど標準化技術の展開と、人材の育成強化にも取り組んでいる。技術開発による標準化と人材育成を日本が担いながら、グローバル拡大のスピードを落とさずにバランスを取りながら進めることを基本としている。また、モノづくりの標準化については、製造工程ごとに技術開発や標準化を行う「スモールものづくり」によるLCA(ローコストオートメーション)を積極的に推進する。

 製造工程の自動化についても、組み立て、検査、搬送、教育の4つをそれぞれ工程別に分けた取り組みを展開している。組み立て工程は生産難易度の高い部分が多く、自動化でクリアすべきハードルが高いことから、全てをロボットに任せず、人との協働を進めていく方針を示している。製造工程でのロボット活用は、ロボットメーカー各社と協業で進める方針だ。ダイキン工業では、ロボットに適応したアプリケーションを「自前化技術」で使いこなしていくことに重点を置く。例えば、画像認識技術などについては、ロボット各社の特性を生かし、同社内で開発したプログラムを用いて、品質を守る技術を自社内で作り上げている。

 繰り返し作業ではロボットを積極的に活用する。一方で、人の持つ技術や技能が必要となる作業との切り分けが大きな課題となっている。例えば、現在の製造工程では、室外機組み立てや結線作業など人の手による複雑な組み立て作業が残っているが、これらの課題を解決するために柔軟物を扱うハンドリング技術の開発、設計も含めたコンカレント開発などを推進。人と機械のすみ分けを進めることで、人とロボットが協働作業を行うことのできる工場を目指す。その取り組みにおいては「人の価値」を最大限に発揮できるような自動化を進めていく。

100人を配属せずにAIの教育へ

 また、検査工程では、人間の感覚(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚など)を用いて製品の品質を判定する官能検査において、AIを活用できると見ており、これらの工程の一部を自動化していく考えだ。官能技術のAI導入を推進するため、人材教育に力を注ぐ。ダイキン工業では毎年400〜500人の技術者を採用しているが、その内100人を事業部門などに配属させずに、社内に設けたダイキン情報技術大学に入学させ、AIに関する知識を習得してもらっている。同大学は、産業構造や社会構造の大きな変革期に対応するために「AI・IoT人材」の育成のために設立した機関であり、そこで2年間徹底的にAIの知識を身に付けるという。

 その他、搬送工程はローコストのAGV(無人搬送車)の標準化を進めている。人材教育に関しては、その一環として、鳥取県に拠点となる研修所「ダイキンアレス青谷」を開設しており、そこでは新入社員研修からロボットや画像処理、金型などに関する技能研修などを実施する。

⇒ 「スマートファクトリー」のバックナンバーはこちら

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.