収穫した果実は荷台にある自動コンテナ収納システムへと送られる。同システムはコンテナが果実で満杯になると、新しいコンテナに自動で交換して、収穫作業が継続できるようにする。コンテナは1台当たり16個の果実収納が可能で、全部で20台を搭載しており、一度の走行で最大320個の果実を収穫できる。
カメラ映像内の果実認識と熟度判定には、専用に開発したAI(人工知能)を用いる。果実の底面(ていあ部)を画像認識し、熟度進行を確認する。ていあ部は日焼けによる色の劣化が生じにくいため、熟度判定に適しているという。同AIでニホンナシの果実認識と熟度判断の確度を検証したところ、日中、夜間を問わず90%以上の精度で判定できることを確認した。
ロボットが認識対象とする果樹は、“V字”型の「列状密植樹形」であることを前提としている。同樹形は農研機構が代表を務める「革新的技術開発・緊急展開事業(人工知能未来農業創造プロジェクト)」が、2017〜2020年にかけて開発したもので、特定方向から観察すると平面に近い形状に見える。同樹形は通常の樹形と比較して、機械による収穫自動化が実施しやすくなる。また、機械を用いない人手作業の場合でも、作業効率の向上が見込める。かんきつ類やりんごなど果樹9品目の列状密植樹形を既に開発したという。
今回発表した取り組みが持つ意義について、農研機構 果樹茶業研究部門 領域長の草塲新之助氏は「近年、果樹生産現場は他の農業現場と同等かそれ以上に高齢化が進んでいる。今後、国産果実の供給量や輸出量を強化するためには、農作業の大幅な省力化や自動化が喫緊の課題となる。しかし、果樹は樹種の違いや生産技術によって1本ごとに木の形が大きく異なる。このため、機械を用いた作業自動化が難しかった。こうした課題を解決するために開発したのが、列状密植樹形や果実収穫ロボットである」と語った。
なお、果実収穫ロボットの実用化時期について、デンソー FA事業部 FA開発室 課長の西野秀幸氏は、実用化に向けた実証実験は予定しているものの「今回発表したロボットはあくまでプロトタイプで、収穫するという基本機能に特化して開発したものだ。実使用環境に耐え得る製品は、完成までに2年はかかると見込んでいる」と説明する。
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