物質・材料研究機構は、機械学習を適用することで、航空機エンジン用材料として有望なNi-Co基超合金の高品質粉末を、高い収率で生産できる条件を探索することに成功した。複雑な製造条件を数回の試行で最適化し、粉末の製造コストを削減する。
物質・材料研究機構(NIMS)は2020年11月30日、機械学習を適用することで、航空機エンジンの材料となるNi-Co(ニッケル-コバルト)基超合金の高性能、高品質な粉末を、高い収率で生産できる条件を探索することに成功したと発表した。
航空宇宙エンジン内の高圧タービンディスクの材料である超合金粉末の製造には、耐熱性や加工のしやすさを含めた品質の高さに加え、高収率、低コストであることが求められる。現在、同粉末の多くがガスアトマイズ法により製造されているが、金属の溶解温度や使用ガスの圧力といったプロセス条件を最適化するには、専門家のノウハウに加え、膨大なコストと時間、人手が必要となる。また、その際の収率は通常10〜30%程度とされている。
研究チームは、高圧タービンディスク用Ni-Co基超合金の粉末製造において、ガスアトマイズプロセスの最適化に、専門家のノウハウではなく機械学習を適用した。
その結果、6回の試行で、高圧タービンディスクの製造に適した、微細で真球度の高い高品質粉末を約78%の収率で得られるプロセス条件を発見できた。また、この方法で製造した粉末を原料単価から見積もりすると、市販の粉末に比べてコストを約72%削減することが分かった。
超合金の特性を制御するNIMSの合金設計技術と、今回の手法を組み合わせることで、用途に応じた機能を持つ超合金粉末を低コストで製造できる。また、今回の手法を製造現場に実装し、活用できていなかったプロセスデータを蓄積して機械学習を進化させることにより、さらなる品質向上やコストダウンが見込まれる。
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