「量産」には、次の要素が入る(図6)。
「量産前準備」として設計者のすべきことは、承認部品の作製である。組立と試験・評価で問題点を見つけて部品を修正し、それを数回行い、「もう修正がない」と判断された段階で、設計者は承認部品を作製する。これは、その部品を量産する部品メーカーに対しては「量産してOK」、部品を購入する組立メーカーに対しては「購入してOK」を指示するものである。承認部品と異なる部品は不良品ということだ。この承認部品は量産期間中、ずっと大切に保管される。
組立メーカーは製品、部品メーカーは部品を量産するために、設備の設定値を決めて治具を作製しなければならない。さらに量産の全工程を記載したQC工程図、そしてその各工程の作業内容と作業順を記載した作業標準書と検査基準書の作成が必要だ。これらも組立メーカーと部品メーカーが作成するものではあるが、設計者の確認は必要である。自分の設計した製品や部品がどうやって作られているかは、量産後に発生するかもしれない不良品の対応のためにも必ず把握しておくべきだ。
「量産開始」されると、この製品は設計者の手から離れることになる。「量産開始」後は「量産開始」時の品質を維持していくことが最も重要であるため、前述の「量産前準備」を設計者がいかに確実に行っているかが量産後の品質に大きく影響する。
全日程にわたって常に頭に入れておくべきこととして、「法規制(安全性)」「信頼性」「製造性」がある。そして、何よりも一番忘れてはならないことはコスト管理である(図7)。
前回お伝えしたが、このコスト管理の重要性を認識していなかったばかりに、せっかく量産までたどり着けたのに、売れば売るほど損をしてしまう結果となり、設計を一からやり直さなければならないベンチャー企業に出会ったこがある。多くの時間と多額のコストの無駄遣いとなってしまったのだ。
コスト管理は日程の管理と併せて、日程の各イベントで管理していくことになる。その詳細は、今後の連載の中でお伝えする。 (次回に続く)
小田淳(おだ あつし)
上智大学 理工学部出身。ソニーに29年間在籍し、メカ設計者としてモニターやプロジェクターを製品化する。モノづくりのベンチャー企業の方とお話する中で、「製品化」という知識がないばかりに、適切でないエンジニアを採用してしまった、売っても損をする、製品が法規制を守っていなかった、などの問題を抱えている企業が多くあることに気付く。素晴らしいアイデアと志を持ちながら、多くの資金と時間を浪費している状況を目の当たりにし、コンサルや研修を始める。製品化のいろはコンサルタント ロジ代表。
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