日系乗用車メーカーの自動車生産は各市場で回復、東南アジアは厳しさ続く自動車メーカー生産動向(1/3 ページ)

日系乗用車メーカー8社の2020年度上期(4〜9月)のグローバル生産実績は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響を大きく受ける結果となった。

» 2020年11月20日 06時00分 公開
[MONOist]

 日系乗用車メーカー8社の2020年度上期(4〜9月)のグローバル生産実績は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響を大きく受ける結果となった。足元では中国や北米などで市場の回復傾向が鮮明となっているものの、年度前半の各国でのロックダウンなどが響き、4〜9月累計では全社が2桁%減となった。通期で見ても前年度実績を上回るのは厳しいとみられるが、9月単月ではトヨタ自動車、ホンダ、SUBARU(スバル)の3社が9月として過去最高を更新するなど、生産ペースは急激な回復を示している。ただ、10月以降、COVID-19の感染が再び広がっており、今後の新車需要の行方は不透明な状況となっている。

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 2020年度上期のうち前半の4〜6月は、3月からCOVID-19が本格的に広まったことで、北米や欧州、東南アジアなどで相次いでロックダウンが実施され、これに伴い日系自動車メーカーの海外工場も生産停止に追い込まれた。一方で中国はいち早く生産活動を再開。各社ともに3月後半から操業を再開し、4月の時点でトヨタやホンダ、マツダの生産台数が前年同期比で2桁増を記録した。また国内工場も、海外調達部品の影響やロックダウンによる輸出停止などで生産調整を実施したものの、工場の稼働自体は継続した。

 7月以降は回復傾向が鮮明となっている。北米では6月から本格的に稼働再開し、7月には北米に工場を構える5社全てが前年比プラスとなった。中国も引き続き好調なペースを維持しており、トヨタやホンダなど月次の過去最高の更新も相次いでいる。国内生産も着実に回復が進んでおり、6月にスズキが前年比プラスとなった他、9月にはトヨタ、ホンダ、ダイハツ工業、スバルもプラスに転じた。

 一方で回復が遅れているのが東南アジアだ。東南アジアはCOVID-19感染拡大による経済の悪化が依然として続いており、新車需要も伸び悩んでいる。このため東南アジアがメインのダイハツや三菱自動車の海外生産は、9月でも前年比2桁減の状況で、三菱自に至っては半減近い落ち込みとなっている。

2020年9月と4〜9月における乗用車メーカー各社の生産実績
2020年9月 2020年4〜9月
国内 海外 うち北米 うち中国 合計 国内 海外 うち北米 うち中国 合計
トヨタ 305,628 536,287 174,314 164,563 841,915 1,262,881 2,238,160 691,528 864,092 3,501,041
4.5 16.3 8.3 48.5 11.7 ▲ 26.4 ▲ 21.1 ▲ 28.3 26.2 ▲ 23.1
ホンダ 66,851 405,845 151,562 189,060 472,696 332,303 1,777,483 623,896 957,367 2,109,786
2.4 11.2 3.6 33.9 9.9 ▲ 25.1 ▲ 18.3 ▲ 32.7 21.3 ▲ 19.5
日産 49,510 312,403 89,011 146,171 361,913 171,961 1,372,862 345,737 803,082 1,544,823
▲ 32.3 ▲ 17.7 ▲ 29.3 ▲ 0.5 ▲ 20.0 ▲ 55.9 ▲ 33.0 ▲ 51.0 3.1 ▲ 36.7
スズキ 93,750 199,445 - - 293,195 407,893 555,376 - - 963,269
24.7 16.6 - - 19.1 ▲ 8.2 ▲ 45.4 - - ▲ 34.1
ダイハツ 91,818 55,570 - - 147,388 398,733 163,322 - - 562,055
9.5 ▲ 21.8 - - ▲ 4.9 ▲ 13.9 ▲ 57.7 - - ▲ 33.8
マツダ 83,402 43,251 15,487 22,275 126,653 272,797 204,513 52,755 128,902 477,310
▲ 1.7 6.7 104.9 5.9 1.0 ▲ 45.8 ▲ 7.9 22.5 21.2 ▲ 34.2
スバル 61,460 34,771 34,771 - 96,231 220,876 133,072 133,072 - 353,948
4.4 32.5 32.5 - 13.0 ▲ 32.2 ▲ 22.7 ▲ 22.7 - ▲ 28.9
三菱 38,837 37,112 - 7,029 75,949 124,423 152,215 - 41,153 276,638
▲ 29.4 ▲ 48.0 - ▲ 47.3 ▲ 39.9 ▲ 58.6 ▲ 58.0 - ▲ 33.5 ▲ 58.3
合計 791,256 1,624,684 465,145 529,098 2,415,940 3,191,867 6,597,003 1,846,988 2,794,596 9,788,870
※上段は台数、下段は前年比。単位:台、%

トヨタは5月を底に回復、9月単月では過去最高に

 メーカー別に見ると、トヨタの2020年度上期のグローバル生産台数は350万1041台と前年同期比23.1%減と2年ぶりに前年実績を下回った。国内生産は同26.4%減の126万2881台と2年ぶりのマイナス。COVID-19感染拡大による工場の一部稼働停止の他、国内および輸出需要の減退に伴う生産調整などが大きく響いた。ただ、5月の前年同月比57.0%減を底に月を追うごとに回復。9月には12カ月ぶりにプラスへ転じた。

 4〜9月の海外生産も前年同期比21.1%減の223万8160台と2年ぶりの減少となった。地域別では、主力の北米が同28.3%減で2年連続の減少。4月、5月と大幅に落ち込んだものの、7月には前年越えを果たしプラスを維持している。アジアは同8.1%減の118万638台で2年連続のマイナス。このうち、いち早く回復した中国が同26.2%増の86万4092台と好調だったものの、中国を除くアジアでは同47.3%減の31万6546台と大きく落ち込んだ。欧州も同31.4%減の25万699台と低迷。各国でのロックダウンに加えて、フランス工場で新型「ヤリス」へ切り替えに伴う減産が発生したことも影響した。8月には6カ月ぶりの増加となった。

 回復のペースも上がっている。トヨタの9月単月は、グローバル生産が前年同月比11.7%増の84万1915台と、9カ月ぶりにプラスへ転じるとともに9月として過去最高を更新した。9月単月の記録更新は5年ぶりとなる。国内生産は同4.5%増の30万5628台と12カ月ぶりのプラス。世界各国での需要回復により輸出が伸びた他、国内市場向けも「ハリアー」やヤリスなどの新型車が好調だった。海外生産はより回復が進んでおり、同16.3%増の53万6287台と9カ月ぶりのプラス。このうち北米は同8.3%増と3カ月連続の増加。中国は「カローラ/レビン」の好調で同48.5%増と大幅に伸ばし6カ月連続のプラスだった。欧州も同19.9%増と2カ月連続で増加した。厳しい状況が続いていたアジアも回復傾向が見られ始めており、タイは新型車「カローラクロス」の好調により同13.6%増とプラスへ転じた他、マレーシアやベトナムでも2桁増を記録。一方、インドネシアは同47.6%減と依然として低迷している。

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