2025年度の売上高4兆円に向けた成長は、フェーズ2で掲げるインフラサービスによって実現する。東芝は2021年度から、事業セグメントをインフラサービス、インフラシステム、デバイスプロダクトなどに組み替える方針だ。2019年度のインフラサービス売上高1兆3000億円に対して、2025年度には1兆8000億円まで伸ばす計画である。
インフラサービスは、ビル関連やPOS、ITなどが関わる面展開型と、エネルギー関連、社会システムなど向けの機能型に大きく分かれている。それぞれを売上高でみると、面展開型は2019年度の5700億円から2025年度に6400億円と緩やかな成長を見込む一方で、機能型は2019年度の7100億円から2025年度に1兆1700億円と大きく伸ばす計画だ。この4600億円の成長のうち、M&Aで2300億円、再生可能エネルギー関連(以下、再エネ)で1000億円が見込まれている。
インフラサービス成長のステップは「サービスオペレーションの競争力強化」「サービスロケーションの拡大」「付加価値サービスへの進化」から成る。サービスオペレーションの競争力強化は2020年度既に着手しており、サービスロケーションの拡大は2021年度から本格展開を始める。付加価値サービスへの進化は、PoC(概念実証)を基に2022年度から事業化したい考えだ。
特にサービスロケーションの拡大では、カーボンニュートラルに対応可能な再エネで多くの事業機会が得られると想定している。太陽光、水力、地熱、系統、蓄電、CO2分離回収など国内外でトップシェアの事業があることが強みになる。東芝の再エネの売上高は、2019年度が1900億円でその多くを系統関連事業が占めている。しかし2030年度には、3倍以上となる6500億円まで拡大できるという。「2025年度までは再エネの売上高は系統関連を中心としたインフラサービスが多くを占めるだろう。しかし2025年度以降は、新たな太陽光や洋上風力の需要が伸びるとともに、VPP(バーチャルパワープラント)など新事業も売上に貢献するようになる」(車谷氏)。
なお再エネのうち、風力については、国内で洋上風力の需要が高まるとして国産化を計画している。車谷氏は「東芝は風力の発電システムで高い技術力があるので、羽根やポールで強みを持つ企業と連携して国産化を図る。現在の太陽光と同じようなビジネスモデルを想定している」と説明する。
また、CPS(サイバーフィジカルシステム)テクノロジー企業としての飛躍を目指すフェーズ3については「既存インフラサービスの進化」「新技術と新規インフラサービスの社会実装」「フィジカルデータのマッチングプラットフォーム」という3つの方向からアプローチするとした。
例えば、再エネでは、フェーズ2で事業の中核をインフラシステムからインフラサービスに移行し、フェーズ3ではインフラサービスをCPSによるエネルギーマネジメントに進化させ、マッチングサービスを拡大させる。
ここでいう再エネのマッチングサービスが、気象、需給、蓄電余力などあらゆるデータを集めることで電力需給の最適なマッチングを行うVPP事業だ。その市場規模は2030年で3000億円、2040年には1兆2000億円まで拡大するという。東芝はこのVPP事業に向けて、ネクストクラフトベルケ(Next Kraftwerke)と新会社を設立している。
また、消費動向ビッグデータのデータサービスでトップシェアを目指す東芝データは、コンビニエンスストアやドラッグストア、商社、決済・ポイント会社、広告、証券、商品材メーカーなど100社超との間でアライアンスを検討しており、データ流通を加速させていく構えだ。国内での2025年度の事業目標としては、東芝テックのPOSとの連携により店舗数13万店舗、会員数3000万人、流通総額4兆円を掲げている。年平均成長率は会員数で65%、流通総額で90%という高い目標になっている。また、東芝テック製POSのシェアが高い北米やアジアを中心に海外展開も進めていく方針である。
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