ビジネスインサイトは今やプロダクトマネジャーだけのものではない。ソフトウェアを利用するエンドユーザーと、ビジネスに関わるベンダー全てのステークホルダーに対して収益化のための示唆を与える。
ソフトウェアビジネスのステークホルダーにはそれぞれ個別の役割があり、抱えている課題や達成すべきゴールもそれぞれだ。最終的に収益化という全社的な共通のゴールにたどり着く過程で、それぞれが担い、期待されている使命を果たさなければならない。
例えば、プロダクトマネジャーに対しては、顧客と代理店のインサイトを可視化して製品戦略を中心に構築し、代理店とのパートナーシップの強化を図ることが期待される。そのインサイトがCRM(顧客関係管理)システムと連携すると、自社の営業戦略を強化させることにつながるだろう。営業担当個人の売上情報とエンドユーザーのインサイトが連携すると、全く異なる視点での分析も可能だ。どの営業担当が売った製品が、顧客に最も利用されているのか、顧客エンゲージメントが営業担当と関連付けられることによって、製品の売り方にも変化が表れるだろう。営業成績と顧客のエンゲージメントには何らかの相関関係が現れるかもしれない。営業目標達成のために何をすべきなのか、顧客のデータに重要なヒントが隠されていたとしても不思議ではない。
そして、機械学習などのAI(人工知能)機能と連携することによって、顧客の行動を予測して効率的なクロスセルとアップセルの実現や、サブスクリプションの契約解除の阻止なども可能になるだろう。情報通知機能と連携して、顧客の考えていることの先回りもできる。今までよりも顧客との関係性がさらに強固となり、ロイヤルティーを高めることにも効果を発揮するだろう。
製品開発や事業の方向性だけではなく、パートナーシップ戦略や営業成績との関連付け、通知機能の連携による売り方の変化、また顧客との関係性にも影響が出てくることも考えられる。ビジネスインサイトが製造業にもたらす可能性は想像をはるかに超えているのだ。
ポストコロナ時代のビジネスでは非対面でのやりとりが日常化していく。顧客のエンゲージメントのために必ずしも顧客に対面する必要はなく、分析されたビジネスインサイトを活用することによって新たな戦略を生み出せる。居住地域や国を問わず、海を超えた顧客さえも理解できて、リアルタイムにアクションを起こせる時代が既に到来しているのだ。
日本の製造業には、ソフトウェアビジネスにおいても海を超えてグローバルで存在感を見せつけてほしい、というのが筆者の個人的な願いである。そのためには、今までに述べた収益化のポイントに加えて、ソフトウェアのセキュリティ対策は万全に講じる必要がある。ソフトウェアビジネスをグローバルで展開した場合、日本では考えられないような事態に陥ることは珍しくない。
そこで次回は、ソフトウェアビジネスをグローバルに展開させる場合に、潜んでいる脅威への対処と、ソフトウェアのセキュリティ対策をどのように講じる必要があるのか考えてみたい。
前田 利幸(まえだ としゆき) タレスDIS CPLジャパン株式会社(日本セーフネット株式会社/ジェムアルト株式会社)ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアアプリセールスコンサルタント ビジネス開発部 部長
ソフトウェアビジネスに取り組む企業に対して、マネタイズを実現するためのコンサルティングやトレーニング、ソリューション提案を実施。全国各地で収益化に関するセミナーや講演活動を展開。IoT関連企業でシニアコンサルタントを経て現職。同志社大学 経営学修士(MBA)。二児の父。
・Sentinelソフトウェア収益化ソリューション
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