サブスクリプションに代表される、ソフトウェアビジネスによる収益化を製造業で実現するためのノウハウを紹介する本連載。第2回は、収益化に直結するデジタルトランスフォーメーションを実現する4つのポイントについて紹介する。
⇒連載「サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代」バックナンバー
今や、製造業にとってのビジネス変革はデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に掛かっているといえる。テクノロジーを駆使して売り上げと競争優位性を確立し、業務の効率性を高めて、顧客に新しいビジネスモデルを提供する。さらに顧客の隠れたニーズを見いだして、顧客とのつながりを強化し、製品やサービスの価値と収益の最大化を可能にする。デジタルテクノロジーで人々のビジネスやライフスタイルを変革し、よりよい方向へ向上させるのがデジタルトランスフォーメーションだ。
デジタルトランスフォーメーションを実現させる中心的な役割はソフトウェアが担うのだが、ソフトウェアビジネスにおいても同様のことが当てはまる。現在は、ソフトウェアの力によってソフトウェアビジネスそのものが革新される時代であり、製造業のソフトウェアビジネスにも、デジタルトランスフォーメーションの必要性が増している。しかし、ソフトウェアによる製品やサービスを提供する企業側は果たして、デジタルトランスフォーメーションの実現に後れを取っていないだろうか。
製造業にとってソフトウェアの収益化を実現することは、それすなわちデジタルトランスフォーメーションを実現させることに等しい。そこで今回は、デジタルトランスフォーメーションの実現が、製造業のソフトウェアビジネスにどのようなインパクトを与えるのか、そのポイントを紹介したいと思う。
最新テクノロジーを駆使したソフトウェアとハードウェアが織り成す次世代のソリューションは、多くのエンドユーザーがデジタル化された世界の恩恵に預かることを容易にしている。しかし、デジタル変革を推進するベンダー企業のビジネスはデジタルトランスフォーメーションがなされているのだろうか。
デジタルトランスフォーメーションを提唱している企業のビジネスが、意外にもデジタルトランスフォーメーションがなされていないことは珍しくない。同じ会社でありながら、それぞれの部門が統一化されていないバラバラなライセンシング方法を採用していたり、従来の古いビジネスモデルのままであったり、デジタル化されていないアナログオペレーションで展開されていることもしばしばだ。
製品やサービスを利用するエンドユーザーだけではなく、製品を提供するベンダー自身もデジタルトランスフォーメーションが必要である。製品やサービスだけではなく、そのベンダー企業自身の環境についてデジタルトランスフォーメーションを成し遂げない限り、真の意味でデジタルトランスフォーメーションが実現されているとはいえないだろう。そうした企業の問題が同時多発的に露呈するのはデジタルトランスフォーメーションのブームが最高潮に達したときだ。企業間で競争力や収益力において次第に格差が生じてくることは想像にたやすい。
デジタルトランスフォーメーションを提唱している企業でありながら、そんな多くの皮肉と矛盾に満ちた状況を看過することなどあってはならない。しかし、現場はそんな状況を認識しているにもかかわらず、目を背けている事実に経営陣は気が付いていない。ソフトウェアビジネスの重要性に気がついている製造業の経営陣はほんの一握りだ。
デジタルトランスフォーメーションの必要性が叫ばれるべき、ビジネスの1つがソフトウェアビジネスなのは明らかであるが、日本の製造業のサービスビジネスがいまひとつグローバルで存在感を示すことができず、世界から後れを取っているのはソフトウェアビジネスそのものの変革の遅れが要因になっていることを、改めて認識しなくてはならない。
製品やサービスを提供するベンダー企業側のデジタルトランスフォーメーションが実現されれば、さらによりよい製品とサービスを提供できるようになり、市場と社会に好循環を生み出せことは明らかだ。企業にとって理にかなったビジネスの実現とデジタル化の方法を考察し、計画的かつ低コストで導入する方法が求められている。
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