サブスクリプションビジネスを実現させる場合にソフトウェアを制御することに注力するあまり、運用効率が考慮されておらず、ライセンスの生成から管理、出荷までが自動化されていないケースが意外と多い。デジタル化を推進する企業の業務は、意外にもマニュアル操作であることは珍しくない。
しかし、バックオフィスのオーダーリング処理から製品出荷やライセンスの提供、エンドユーザーのアクティベーション、製品のアップデート、ライセンス更新のプロセスを自動化させられれば、迅速で正確なライセンスの提供と、運用のオーバーヘッドを極力削減することを可能にする。また、代理店や顧客の情報を統合的に管理して、収益配分や請求処理のビジネスプロセスも最適化できれば、効率化とコストの削減につながり、削減したコストを原資として新たなIT投資に回すことも可能だ。
市場の動向を絶えず注視し、顧客と対話し、つながりを強化するためには、顧客を理解する必要がある。また、一人一人の顧客に特化したサービスを提供するためには、隠れた顧客のニーズを見いだすことが重要になる。特に売り切り型のビジネスモデルと比較すると、サブスクリプションモデルでは購入後のフォローアップの重要性が増している。
そこで、顧客とのつながりを商品の販売を終えた段階で終了するのではなく、顧客の製品の利用状況にまで配慮して、顧客の利用状況をクラウドを通じてリアルタイムで把握できれば、顧客の新しいニーズを拾うことも可能になり、新たな提案も行えるようになる。IoTの世界では当たり前になっているような、ソフトウェアの利用状況をクラウドに収集することによって、開発した機能に対するパフォーマンスを把握することは顧客を知る手段の1つだ。
例えば、トライアルで提供した製品が使われているのかどうかの把握ができれば新たな営業的なアプローチも可能になり、今までと完全に異なるスタイルでのビジネスを展開できる。顧客がソフトウェアをどのように利用しているのか、テクノロジーを駆使して利用状況を取得すれば、売上予測や顧客離反率の低減に役立てることができ、今までに見えなかったことからビジネスの実態や、未来を知ることをも、さらに新しいビジネスモデルを創造することも可能にするだろう。
デジタルトランスフォーメーションの実現によって、ソフトウェアを収益化させ変革させることを可能にする。新しいビジネスモデルを実現し、運用コストを削減し、新たな収益源を確保、維持できるようになる。いわば、製造業のビジネスを支える攻めのプラットフォームが出来上がるわけだ。
次回からは、今回取り上げたデジタルトランスフォーメーションを実現させる4つのポイントそれぞれを、どのように実現させるのか、具体的な方法について掘り下げて考えてみたいと思う。
前田 利幸(まえだ としゆき) 日本セーフネット株式会社/タレス・グループ クラウドプロテクション&ライセンシング ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアプリセールスコンサルタント
ソフトウェアビジネスに取り組む企業に対して、マネタイズを実現するためのコンサルティングやトレーニング、ソリューション提案を実施。全国各地で収益化に関するセミナーや講演活動を展開。IoT関連企業でシニアコンサルタントを経て現職。同志社大学 経営学修士(MBA)。二児の父。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.