日本マイクロソフトは、オンラインで会見を開き、同社 社長の吉田仁志氏が2024年度までの中計経営戦略を説明した。新型コロナウイルス感染症の影響もあって社会全体で機運が高まりつつあるDX(デジタルトランスフォーメーション)を、政府・自治体向けと、物流、製造業、小売、中堅中小などの企業向けを軸に推進していく方針を明らかにした。
日本マイクロソフトは2020年10月7日、オンラインで会見を開き、同社 社長の吉田仁志氏が2024年度までの中計経営戦略を説明した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあって社会全体で機運が高まりつつあるDX(デジタルトランスフォーメーション)を、政府・自治体向けと、物流、製造業、小売、中堅中小などの企業向けを軸に推進していく方針を明らかにした。
会見で吉田氏は、「お客さまに寄り添うマイクロソフト」「マイクロソフト=デジタルトランスフォーメーション」という経営姿勢を強調。特に、DXについては「この規模の企業でDXを形にできている例は他にあまりない。DXはマイクロソフトの戦略そのものであり、その経験とノウハウを顧客に共有していきたい。DXを検討する時には、マイクロソフトを第一に選んでほしい」(吉田氏)と強い意気込みを示した。
既にマイクロソフトの事業の半分をクラウドが占めており、クラウドに関する市場調査でマイクロソフトをトップとする結果も幾つか出るようになっている。吉田氏は「このクラウドに関する調査で全てトップにする勢いで、クラウドを強化していく」と語る。
また、2019年度の国内における事業成果としては「NTTとのグローバル協業」「厚生労働省によるCOVID-19感染者情報の一元管理システムの構築支援」「教育機関向けリモート学習環境の構築支援」などを挙げた。ただし、「COVID-19によって、日本がいかにIT後進国であるかを露呈することとなった。だからこそ、日本全体にDXが必要だ」(吉田氏)という。
これまでも日本マイクロソフトはDXを重視する経営方針だったが、DXをより求める日本の社会環境の変化に合わせて、DXの推進にさらに貢献していく。吉田氏は「ビジネスの成功だけを目指すのではなく、日本の経済再生に向け、重点分野の活性化に貢献していく姿勢が重要だ」と語る。
ここでいう重点分野が、政府・自治体向けと、物流、製造業、小売、中堅中小などの企業向けの展開になる。まず、政府・自治体向けについては、競合のAWS(Amazon Web Services)が先行しているが、エッジからクラウドまでを広くカバーするマイクロソフトの強みに加えて、GitHubなどオープンソースコミュニティーとの連携や、デジタル人材育成などを活用してアプローチしていく。
一方、企業向けでは、物流はヤマト運輸、製造業は日立製作所、小売はファミリーマートやローソンといった顧客企業との協業の実績を挙げて、そこで得られた知見とノウハウを各業界に広く展開していく方針だ。また、中堅中小企業については「日本の企業数の99.7%、労働者数の70%を占める中堅中小のDXは極めて重要だ。まずはリモートワーク環境の整備を支援していく。そのために、今までにない低価格のサブスクリプションを提供する」(吉田氏)とした。
これらの顧客へのアプローチとしては「セキュリテイ基盤の確立」「ワークスタイル変革Next」「次世代デジタル人材の育成」「アプリケーション開発の民主化」の4つを上げる。
中でも、次世代デジタル人材の育成では、経営層向けのAIビジネススクールのカリキュラムを拡張し、エンジニア向けや学生向けに展開を拡大する。また教師が学生への教育にも活用できるようなトレーニングの提供も検討している。
また、アプリケーション開発の民主化では、テキストコーディングが最小限で済む「ローコード開発」や「ノーコード開発」をより多くのユーザーが利用できるようにしていく。吉田氏は「ITのプロでない人がアプリケーションを開発できるようにしなければ、ITの進化に追い付けない。われわれは『アウトソースからインソースへ』と呼んでいるが、これまでアウトソーシングされていたITを、進化させてユーザーに戻さなければならない」と説明する。
この「アウトソースからインソースへ」の改革を実現するのがマイクロソフトの“ビルディングブロック”だ。IaaSからSaaSまでをカバーするクラウドの「Azure」、開発者コミュニティーのGitHub、ローコード開発やノーコード開発に用いる「Miorosoft Power Platform」、業務アプリケーションの「Microsoft 365」や「Microsoft Dynamics 365」などから構成される。「これらに独立系ソフトウェアベンダーやパートナーのソリューションを加えれば、レゴブロックのようにサービスを活用できる」(吉田氏)としている。
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