新型コロナウイルス感染症の影響により、インバウンドをはじめとする国内消費が大幅に減少。小売業では一部で買いだめが生じているものの、総じて、業況は悪化している。これは、景況調査における業況判断DIの推移を産業別に見た際に、小売業を除き足元の2020年1-3月期が低下していることからも分かる(図6、2ページ目に掲載)。製造業について業況判断DIの推移を業種別に見てみると、足元の2020年1-3月期は「パルプ・紙・紙加工品」で特に大きく低下している(図22)。
日本商工会議所が実施した商工会議所LOBO調査における業況DIの推移を産業別に見ても、2020年2月以降大幅に景況感が悪化していること、また先行き見通しも更に悪いことが分かる(図23)。
加えて有効求人倍率についても、2020年1月に大きく低下しているが、2月はわずかな低下にとどまっており、雇用への影響も懸念される(図24)。
東京商工リサーチの「第2回新型コロナウイルスに関するアンケート調査」をみると、2020年3月時点の新型コロナウイルスによる企業活動への影響の有無については、大企業に比べると割合がやや低いものの、「現時点ですでに影響が出ている」と回答した中小企業が5割以上も存在する(図25)。
その内訳については「マスクや消毒薬など衛生用品が確保できない」と回答した企業が51.1%と最も多く、次いで「売上(来店者)が減少」「イベント、展示会の延期・中止」などが多く、既に新型コロナウイルスの影響が顕在化しているといえる(図26)。
2020年3月時点における新型コロナウイルスによる今後の懸念については、「感染拡大」と回答した企業が74.3%と最も多く、感染拡大を抑えることが企業にとっても重要であることが分かる(図27)。今後も感染症の影響による厳しい状況が続くと見込まれる中、中小企業・小規模事業者は多様な課題に対処することが求められている状況だ。
感染症の影響による厳しい状況が続くことに加え、将来的な人口の減少も見込まれるなど、日本の中小企業を取り巻く環境はより厳しいものになっている。このような中で日本経済を成長・発展させていくためには、企業が生み出す付加価値自体を増大させていくことが必要となると中小企業白書2020は指摘する。
これを論じるべく中小企業白書2020は中小企業・小規模事業者を期待される役割や機能に着目し4つの類型に分類し、その実態を明らかにしている。その詳細については、第2回で詳しく見ていきたい。
長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.