使用する3Dプリンタの造形エリアよりも大きなモノを出力したい場合、3Dデータの形状を分割して3Dプリントするケースがあります。形状を分割するため、後からはめ合わせる手間がかかりますが、使用するサポート材の量が減るため、材料費を抑えられたり、サポート材の除去作業の手間を軽減できたりする他、造形時間を短くできるなどのメリットがあります。
分割する箇所は、デザインに影響がない部分や後からはめ合わせやすい箇所などを選びます。さらに、はめ合わせるための隙間や組み立てしろの寸法などについては、肉厚と同様に3Dプリンタによって変わってきます。試作を繰り返してはめ合わせの精度を上げていくというアプローチもありますが、少しきつめに設計しておいて、後でヤスリで削るというやり方もありますし、逆に緩めに設計して接着剤などで固定してしまうという方法もあります。
ここまで、3Dプリンタで造形する際、考慮すべき基本的な設計の考え方について解説してきましたが、ここで忘れてはならないのが、“設計しているモノが最終的にどんな加工方法で製造されるのか”です。
3Dプリンタによる造形がゴールであれば問題ありませんが、例えば、最終製品として金型を用いて射出成形する、あるいは切削加工で削り出すといったような場合、設計する3Dデータは、その最終的な加工方法で作れる形状でなければなりません。3Dプリントするために、形状を分割したり、勾配を付けたりすることは必要な作業ですが、最終的な加工方法を意識した設計を忘れないようにしてください。
今回紹介した内容はある意味ベーシックなものであり、使用する3Dプリンタの機種によって注意すべきポイントなども変わってきます。ここに関しては、ご自身でいろいろとトライ&エラーを繰り返し、良い設定パラメーターを探っていく必要があります。
なお、今後の連載の中で、実際の3Dプリンタを例に設計時のポイントや、設定/パラメーターの違いによる造形品質の変化など、より実践的な内容をお届けする予定なので、引き続き本連載を参考にしていただければと思います。それでは、また次回お会いしましょう! (次回に続く)
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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