現在、技術開発の面で力を入れるのが「ソリューションライブラリ」そのものの開発と、これらを流通する仕組みの開発である。「ソリューションライブラリ」の開発については各案件を進める中で典型的な形を見つけ出し、パッケージ化していく。現状ではまだ少ないが「今後、着実に増やしていく」(鶴氏)。
「ソリューションライブラリ」を社内で流通させる仕組みについては「まだこれからという段階だが、基本的なソリューションやアプリケーション開発環境をパッケージ化し、これらを一括で提供できる仕組みを作る。三菱電機グループの強みを生かし、クラウド環境だけではなく、エッジ環境にも提供できる形とする計画だ」と鶴氏は語っている。
「ソリューションライブラリ」はコンテナベースでデリバリーし、開発環境もその中で合わせて提供する計画である。「基本的なソリューションの形は提供するが、具体的なビジネスの形にするのは各事業部門となる。そこで個別に開発ができるように、開発環境も含めた形で提供する」と鶴氏は説明する。
事業部間のコンセンサスなどが必要になるため、現在クラリセンスの開発は、各事業分野のキーマンを集めた協議会形式で進めている。その中で研究所のメンバーが技術を中心としたハブとしての役割を担い、事業部横断の連携に取り組んでいる。三菱電機の事業部横断組織では2020年4月1日に社長直轄組織として「ビジネスイノベーション本部」が新設された(※)が「ビジネスイノベーション本部とも連携する形で仕組み作りを進めている。各事業部でビジネスの背景も異なっているので、アーキテクチャも具体的なものになり過ぎると受け入れられない部分が出てくる。抽象度を高めて緩やかに結ぶイメージで進める」(鶴氏)。
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ただ、事業部ごとに事業背景が異なり、使うデータについても粒度が異なっているなど「データ活用の枠組み」を決めるというだけでも簡単なことではない。
鶴氏は「それぞれ独立して取得してきたデータを別の目的で使うということはハードルが高い。得られたデータが必要とされている要件を満たしているとは限らず、使えない場合も多いからだ。現状では個別の案件ごとに使えそうなデータを持っている事業部門に話をして調整をしていくという方法しか取れない。こうした取り組みを進めつつ、将来的には三菱電機グループ内の『データカタログ』を整備する構想で進めている。オープンデータ構想なども進んでいるが、まずは社内でデータのカタログ化を行い、どういうスペックでどういうデータがあるのかを簡単に探し出せる仕組みを作る」と課題と構想について説明する。
既に「インフラ」「モビリティ」「ライフ」「インダストリー」の4分野の枠組みでいくつか具体的に「クラリセンス」を適用した案件が進んでおり「早期に成功事例を作りたい。成功事例を作ることで、データ活用ソリューションのアイデアも生まれやすくなる。最初の成功事例は2021年度中に何か形にしていきたい。アーキテクチャの整備については2022年度までに一通りそろうようにする」と鶴氏は今後の展望を語っている。
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